第15話 本当の愛、本当の友達
2人はゆっくりと唇を近づけたまましばらく離さなかった。
俺はぼーっとしていると、遥に話しかけられた。
「これが本当の愛だよ。」
「は?」
「相手を絶対に守り抜く。それがあなたにはできない。」
「何言ってんの?さっきから。」
「あなたは本当の愛を知らない。私の言葉も理解できないなら、彼女なんてつくんないほうがいいよ。」
こいつはなにを言っているんだ?全く理解できない。どうかしてるのか?
「何言ってんのって顔してるね。」
全部見透かされていた。
「しっかり説明してあげるね。でもその前に一個聞いていいかな。」
「うん。」
「晴人くんは真衣のことが本当に好きだったの?」
「当たり前だろ。」
「本当に?」
「ああ。」
「そっか。晴人くんはさ、真衣に裏切り者が触れるなって言ってたでしょ。」
「うん。」
「でも本当に好きだったらそんなことしないよ。」
「は?なんで?」
「だってさ、あの2人を見てみなよ。」
2人はまだ抱き合って涙を流していた。
「2人はさ、お互いを絶対に守り抜く気持ちでいるんだよ。」
俺は言葉が出なかった。
「大和がなんか言われたときは春乃のが言い返して、春乃がなんか言われたときは大和が言い返して。絶対にお互いを見捨ててないでしょ。」
「確かに。」
「本当の愛ってそういうことなの。」
「はあ。」
「絶対に相手を信じて、他人の言葉になんかで壊れない関係。共に戦って、共に笑って、時には泣いて。でも絶対に心は離れ離れにならない関係。それが本当の愛。晴人くんはそんなことしたことあるのかな。」
俺はよく考えてみた。でもそんな関係になったこと一度もなかった。
「あるの?」
「ない。そんなこと考えたこともなかった。」
「ほらね。それって相手のこと本当に好きなの?」
そう言われるとそうじゃないのかもしれない。
「あなたの愛は簡単に壊れた。だから好きじゃなかったんじゃない?」
「好きだった。いや好きなつもりだった。でも遥さんの話を聞いてハッとした。俺の好きは表面上だけだったんだって。今気づかされた。」
「あなたのには本当に好きと言える関係になったことが一度もないと思うから、私の言ったことが全部は理解できないかもしれない。」
「そっか。」
「でもそれは友達でも言えるからね。」
「え?」
「友達でも共に戦って、共に笑って、時には泣いて。それが本当の友達だからね。」
「じゃあ、俺は本当の友達もいなかったのか?」
そう思うと涙が止まらなくなった。
「そうかもね。」
遥さんが慰めてくれる。
「ありがとう。気づかせてくれて。」
「いえいえ。」
遥さんはにっこり笑うと元の席に戻って行った。
俺はずっと本当の愛はともかく、本当の友達すら見つけれていなかった。
涙が止まらない。
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