第9話 この場所
「まず何から整理しようか。」
「うーん。ここがどこか。じゃない?」
「そうだな。何か知ってる人いないか?」
俺は頭を押さえてしゃがみ込んだ。真衣が「大丈夫?」と近寄ってくる。俺の脳にあのシーンが思い浮かぶ。幸希のあの言葉。最後に話した言葉。いや最後の捨て台詞。
「、、、さよなら。」
この言葉の後2人は窓から飛び降りた。間違いない。ここだった。みんなが心配する。春乃が駆け寄って来てくれた。
「俺は、、、、知ってる。」
「何かわかるのか?」
「なんでもいいから教えて。」
「ここが、、、、」
「ここが?」
「2人が飛び降りた場所だ。」
俺より先に口を開いたのは大和だった。
「なんで知ってるんだ。」
俺は反射的にその言葉が出た。
「一年前のあの日。俺は春乃と向かいのショッピングモールで一緒に買い物をしてたんだ。」
「そうなの?」
「ああ。そして悲鳴が聞こえたんだ。外から。外に出てみると全身がぐちゃぐちゃにになった2人が倒れていた。」
「うそ、、」
「本当だ。残念ながら。」
「なんでそれを早く言わないんだよ。」
「おかしいんだよ。あそこまで原型を留めていなくて。でも今俺たちの前に現れた。そんなことがなぜ起こるのかおかしくて仕方がない。どうしてそうなのか。」
「確かに。原型を留めて ないのになんで。」
「幽霊、、?」
「やめてそういうの。怖いから。」
「だとしたら地縛霊か?」
「だからやめてって。」
「なにこわいの?」
「こわいに決まってる。」
「と言うか。なんで晴人も知ってそうな雰囲気を出していたんだ?」
「実は、、」
真衣がぎゅっと抱きしめてくれる。
「苦しかったら言わなくていいよ。」
「いや、言わないと。」
「そっか。じゃあ何があったの。」
「実は、、、」
真衣がうんうんと頷いてくれる。
「この場にいたんだ。」
全員の声が驚きにかわる。真衣も流石にびっくりしたのか抱きしめるのをやめて俺の顔をずっと見つめてくる。そして俺はもう一度言う。
「この場で2人が飛び降りたところをみた。」
「どうして止められなかったの?」
「厳しかった。俺も2人に近づけないようになってたし。」
「どう言うこと?」
「近くの柱に気づいたらむすばれてた。目が覚めたら。」
「そうなの、、。」
「ああ。だから知ってる。」
「なるほど。でもさ。なんでクルミは生きていられたんだ?」
「そんなの簡単だよ。」
今まで黙っていた遥が口を開いた。
「なにか知っているのか。」
「まあ。確信があるわけじゃないけど。」
「そうなのか。ちょっと教えてよ。」
全員の視線が遥に集まる。
「あれがドッペルゲンガーだから。」
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