第5話 混乱

颯太の圧に押されて春乃が追放されることに決まった。春乃は俯いたまま何も喋らなかった。いや何も喋れなかった。春乃が追放されることになってから誰も喋らない。きっと颯太を除く全員に申し訳ない気持ちがあるからだ。しかしこの出来事が俺の違和感を確証に変えた。

「ちょっといいか。」

「なんだ?」

やっぱり最初に突っかかってきたのは颯太だった。

「俺絶対こいつだと思う。」

俺はそうして颯太を指差した。

「なぜ俺だと思ったんだ。」

「お前。会議が始まった頃。今まで聞いたことのない発言の数々があった。普通ならあんな発言はしない。そして今大した根拠もないまま春乃を追放しようとした。スパイじゃなきゃそんなことはしないはずだが。」

「根拠がない?聞いた時に何も喋らなかった。だからそれだけだ。」

「春乃がいると後々厄介なことでもあるんじゃないか?だからこれだけ追放したいんだろ。」

「んなわけねえだろ。」

「俺はみんなを救いたい。そのために邪魔になる奴はいらない。」

「自分で言っているじゃないか。」

「いや。待って欲しいんだ。俺少し引っかかるところがあって。」

「なんだ?」

「さっきの仮面の女に見覚えがあった。」

「は?」

「そこから考えた時どうしても春乃が関係ないように感じた。」

「関係ないならここにいない。お前の推理は違っている。」

「そうよあなたは間違っている。」

真衣が乗っかってきた。すると室内は混乱の渦に包まれた。颯太に賛成する声。晴人に賛成する声。その二つの声が飛び交った。室内は至る所で言い合いが起こってしまった。しかし、

「おい。みんな黙れ。」

大和が声を上げた。

「俺が整理してやる。」

室内は一気に静まった。

「晴人の言いたいことも分かる。そして颯太の言いたいことも分かる。どちらの意見も非常に納得できる。だから。」

「だから?」

「もう一度スキップがいいのでは?」

それはない。室内の雰囲気はそんな感じだった。

「わかった。俺が行く。」

康介がもう一度声を上げた。それをまた春乃が止める。

「だからそれはなし。」

やっぱりだめだった。何もまとまらない。大和が叫ぶ。颯太も叫ぶ。おかしくなった康介を必死に春乃が止める。真衣はまた泣き出し、それを俺が慰める。


もうだめだ。何もまとまらない。俺は混乱した室内を見てただ呆然としていた。

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