第4話 決めつけ
初めて被害者が出てしまった。早くスパイを見つけ出さなければ。終わる。
「じゃあ時間延長になります。せいぜい頑張りな。」
「おい待てよ。」
大和と颯太が仮面の女を取り囲む。
「なにが目的だ。言えよ。」
「さあ?」
「目的がないわけないだろ。言えよ。絶対あるだろ。」
「自分で考えてみなさい。その少ない脳みそで。」
「なんだてめえ。」
大和が襲いかかる。次の瞬間銃声が鳴り響いた。大和が肩を抑えてうずくまった。そこに春乃とココネが駆け寄る。
「大丈夫?」
大和は肩を抑えたままうめき声を上げている。
「クソ野郎。ふざけやがって。」
颯太が襲いかかる。しかし。
「お前もこうなりたいのかな?」
仮面の女が銃口を颯太に向ける。
「逆らうな。無駄な犠牲を増やすな。」
優希が言う。
「でも、、」
「でもじゃない。引け。」
雄一郎が初めて口を開いた。
「お前覚えとけよ。」
颯太は仮面の女に捨て台詞を吐きながら元の席に戻った。そして仮面の女は静かに部屋を後にした。
「どうすればいいんだよ。」
「私に言わないで。私が分かるわけがない。」
「そうだよな。」
そんな中口を開いた人がいた。
「俺を追放して。」
康介だった。
「俺は病気だ。そんな長くない。」
「いや、でも。」
「でもじゃない。いいから。」
「仮に康介を追放したところでさっき撃たれた。あいつの命が無駄になる。」
「じゃあ生贄として俺を捧げてくれ。」
「ねえみんな落ち着いて。」
口を開いたのは春乃だった。
「簡単に命を捧げないで。みんなに一つしかない大切な命なんだから。」
「でもこいつがいいって言うならいいんじゃないかな?」
「颯太。だめ。今の発言を撤回しなさい。」
「は?なにヒーロー気取りになってんの?」
「なってない。」
「お前がこんなこと言い出すから会議の時間が減るんだろ。もしかしてスパイだから時間を稼いでいるの?」
「待って違う。」
「おいこいつこんなに焦ってるぜ。絶対こいつじゃねえかよ。」
室内がざわめく。
「違うってねえ。聞いて。みんなおかしい。」
「おかしいのはお前の方じゃないのか?」
春乃は泣き出してしまった。
「おい諦めて白状しろよ。スパイさん。」
春乃は何も喋らなかった。
「みんなこれが証拠だよ。次の会議こいつに入れておしまいだな。」
きっと絶対違うのに。みんなは颯太の圧に押されて頷いてしまった。本当にこのまま春乃が追放されてしまうのだろうか。そんなことが許されていいのだろうか。僕は言いたかった。けど言えなかった。
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