第3話 初めての犠牲者

「さあ投票を始めるわよ。」

「おいまだ早いだろ。」

「そうよ無理に決まってるわ。」

「ごちゃごちゃ言うなよ。人狼ゲームでも会議の時間制限はあるでしょう。」

「終わった。確実に1人が死んじゃう。」

真衣がそう言ってもう一回泣き出す。

「今12人いるだろ。6人ずつに投票すれば1ターンスキップできるんじゃないか?」

頭のいい優希が言った。

「確かに。」

「やっぱ天才だな。」

よくそんなことが思いつくな。やっぱり尊敬する。

「待ってだめ!」

華奈が叫んだ。

「このままスルーしたら確実に1人死んじゃう。」

「何でだ?」

「夜のターンで死んじゃう。」

「確かに。」

「それもそうだ。」

確かに。どうすれば、、、いやなんか変だ。俺は今超絶違和感を覚えた。絶対今の会話の中にスパイがいる。そう確信した。なら今一度も発言していない遥、裕太、雄一郎は白だろう。この3人は陰キャだこいつらにスパイは務まらないだろう。まあそれは置いておいて本当に誰なんだろうか。

「え、延長できますか?」

春乃が言った。

「延長して欲しいの?」

「うん。お願いします。」

「あっそ。じゃあ1人生贄を用意しなさい。」

「はあ?」

「そんなことできない。」

室内がざわめく。そんな中1人が声を上げた。

「俺が行く。」

裕太が声を上げた。

「何言ってんの?ねえ。待って裕太くん。」

遥が必死に止める。

「俺が生贄になれば。みんなが助かるんでしょ?なら俺がなる。」

「待ってバカ。裕太がいなくなったら私はどうすればいいの?ねえ。」

「大丈夫。お前ならいけるだろ。」

「決まりだね。」

「決まりじゃない。ねえ。まって。ねえ。」

「じゃあ最初の被害者はお前だね。クラスメイトのために死ぬんだ。」

「ああ。当たり前だ。」

「まってやだ。ねえ。やだ。」

「大丈夫。遥。お前は俺がいなくても生きて行ける。」

「嫌だねえ。いやって言って。ねえ。」

「じゃあね。ヒーロー気取りの彼氏さん。」

仮面を被った女はゆっくり銃口を彼のおでこに向けた。室内には遥の悲鳴と銃声が鳴り響いた。


みんなは呆然としていた。遥は裕太の手を握りながらうなだれていた。そして大粒の涙が流れていた。逆に真衣の涙は止まっていた。きっと恐らく涙も出ないぐらいにショックを受けてしまったのだろう。そして仮面を被った女はこの状況を見て小さく笑った。


どうすればいいのか。こんな状況がずっと続くのか。早くスパイを見つけ出さなければ。

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