第2話 役職
俺はぎゅっと真衣を抱きしめた。
その時だった。誰かが倒れた。康介だった。みんなが駆け寄る。
「大丈夫か?」
「うん。ちょっとふらっとしただけ。気にしないで。」
「本当に大丈夫なの?」
「うんとりあえず。さあ、話の続きをしよう。早くスパイを探さなきゃ。」
「春乃、みてあげてて。」
「わかった。」
春乃はクラスのお母さん的存在だ。勉強もできるし、料理もできる。周りがよく見えていて、怪我に関する知識はとても多い。まさにお母さんだ。将来は医学部に進学するつもりの天才だ。
「となると。誰が怪しいんだ?」
「誰も疑えねえよ。クラスの仲間だから。」
怪しい。颯太がそんなことを言うわけがない。颯太は他人の不幸が大好きだ。人の不幸を餌に動いている気持ち悪い生き物。いや最底辺の人間だ。そんな颯太がクラスのことを考えるか?
「華奈、誰が怪しいと思う?」
「まだわからない。誰も動き出していない気がする。何もわからない状態で動き出すのは危険。余計な被害者が生まれてしまう。」
「そうだよな。」
「人狼ゲームってことはさ、役職もあるのかな。」
「私こんなカードが入ってた。」
真衣が取り出したそのカードには「占い師」と書かれていた。
「みんなも入ってるのかな。」
しかしほかの人には何も入っていなかった。
「じゃあ真衣は白いな。」
「そうだな。真衣は誰が怪しいと思う?」
「私は優希。やっぱりあそこであれだけ落ち着いていられるのはおかしいと思う。」
「だから違うって。」
「でも何でそんな冷静だったの?」
「あそこで俺までパニックになってたらこうやって冷静に会話できてないよ。」
「やめて。」
いままで黙っていたココネが口を開いた。
「その話はさっきの華奈の話で終わったはず。もっと怪しい人をさがさなきゃ。」
「そうだな。」
「真衣もパニックなのはわかるけど簡単に人を疑ったらダメだよ。」
「うん。ごめん。私が悪かった。」
「全然いいよ。大丈夫。」
みんながパニックになっている。早くこんな状況から抜け出したい。ダメだ。もうダメだ。
「はあい時間切れー!」
「こんなに早くか?」
「まだ何もわかってないぞ。」
「実際の人狼もこんなもんでしょ。」
「こんなことして何になるの。あなたには人の心がないの?」
「人の心ね。その言葉そっくりそのままお返しするわ。」
「え?」
「さあ早く投票するよ。」
みんなが固まった。この不気味な女の言葉に。そして俺はそれに違和感を感じた。
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