(旧)リアル人狼ゲーム

ひろまる

第1話 始まりの朝

コツッコツッ。不気味な足音が響きわたる。やがてその音が大きくなる。そして止まる。

「パチッ」

指を鳴らす音が聞こえる。周囲が明るくなった様に感じる。顔を上げると見慣れた顔が並んでいた。その数11人。俺も入れて12人。ここは教室なのだろうか。前に立っているのは女だろうか。髪が長く、高めのポニーテールをしている。この場から早く逃げたいが鎖で繋がれており逃げられない。みんな状況を把握できていない様だ。そして女が口を開く。


「今からリアル人狼ゲームを始める。ルールは簡単。この中にいるスパイを見つけ追放する。ただそれだけ。さあ。会議を始めなさい。」


突然ゲームが始まった。俺は理解が追いつかなかった。というかここにいる全員の理解が追いついていなさそうだった。よく見ると知っている顔ばっかりだった。なぜみんながここに来ているのだろうか。すると手錠が外された。前の女性が振り向いた。真衣だ。

「ねえ。怖いの。なんでこんなことになってるの?助けて晴人くん。」

そう言いながら床に膝から崩れ落ちた。俺はそれを抱きしめた。

「大丈夫。俺が守るから。絶対。」

「絶対?」

「絶対だ。」

周りを見渡す。みんながパニックに陥っていた。そんな中唯一言葉を発して奴がいた。優希だ。

「みんな落ち着いて。見つけないと。スパイを。混乱していても仕方がないよ。」

「混乱するに決まってでしょ。何でそんな冷静なの。あなたがスパイなんじゃない?だからそんな冷静なんじゃないの。ねえ答えてよ。」

真衣が泣きながら叫んだ。パニックに陥ってるから仕方ない。真衣の涙はまだ止まらない。

「俺ではない。早く見つけないと。だめだろ。」

「そう言ってるお前が一番今怪しいからな。」

大和が叫ぶ。

「そうだぞ。どう感じてるんだ?お前が一番怪しい。」

「いやまて。何で怪しいんだよ。」

「私は彼は怪しくないと思います。」

そう口を開いたのは華奈だった。

「どーうしてそう思うんだ。」

大和が詰め寄る。大和は体がデカく逆らうことができない。でも今日の華奈は違った。

「彼は違うと思います。スパイなら話を始めないと思います。パニックのまま最初の会議を終わらせられたら絶対に1人を殺すことができる。スパイたちにとってはこの状況は非常に美味しい。だから違うと思います。」

「確かにそうだな。華奈の言う通りだ。」

「だとしたら誰なんだ?」

「怖いよ晴人くん。」

俺はもう一度真衣をぎゅっと抱きしめた。

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