第8話 もぐりこむ
「で、あの巫女から何を聞いたのかな」
うさぎは奥に通されている。たかが物売りの娘をこんな大きな店の番頭が相手にしてくれるとは思っていなかった。
裏で店の下女たちから話を聞くつもりだったのだ。
「何も聞いていません、話を聞く前に侍所のお役人が来られて」
「お前はあの巫女の何なんだ」
そこで番頭はうさぎの身体に視線を走らせた。
「姉妹という訳でもなさそうだし」
顔が、身体が違いすぎるとでも言いたいのか、あちらは体を売るのが本業私は漁師だ、仕方がないだろうと思う。
「たまたまうちに転がり込んできたんです、男から逃げてきたのかとでも思っていたのですが、盗人とは」
「ならお前は何をしに来たんだ」
「あの子が、自分の命と引き換えにしても襲いたくなるようなお店って、どんなところかと」
番頭は急に笑い出した。何がおかしいのだろう。
「いや、すまぬ、つまりは野次馬ということか」
「申し訳ありません。物見高いのが性分なものですから」
「で、どう思った
「さすがにご立派で、そんなお店を束ねる番頭さんの男っぷりも、ほれぼれ致します」
「そうか、お前もなかなかいい女じゃないか、どうだ、俺がいい想いをさせてやってもよいが」
「本当ですか、でも、おかみさんといい仲だとか、町の衆から聞いたのですが」
「まったくどこの阿保どもが下らんことを、あれにはちゃんと、いや、なんでもない。あれは妹だ」
「そうなんですか、そんなことは誰も」
「いかんいかん、今のは聞かなかったことに」
番頭は本当に口を滑らしたと慌てた表情を見せている。
「えー、つまんない。私そういうの聞くのだい好き。聞かせてくださいよ」
うさぎは姿を作った、ここらあたりに何かがありそうだと感じたからだ。
「教えてくださったら」
膝を立てた、単衣の裾が割れ、奥が見えそうになっているはずだ。
番頭の喉がごくりと動いたのがわかった。
なるほど、おかみとできているのは単なる噂だというの番頭の言葉は本当らしい。
おかみと出来ているような男が、自分に手を出そうと思う訳はない。店の表でちらと見たおかみは、小股の切れ上がったいい女で、どう考えても自分とは差がありすぎると思ったのだ。あんな女を抱く男が自分を選ぶはずはない。
うさぎはふと気が付いた、もみじの客というのは誰だ? もしかすると旦那ではないのではないか。もみじも自分よりはいい女かもしれないが、おかみと比べるとまだまだ子供だ。
女の趣味は意外と変わらないと聞く、特に金のある男は、女を呼ぶにしても自分の嗜好に合う者を呼ぶだろう。となるともみじを呼んだのは。
「そうか、知りたいか、ではまず口取りを頼もうかな」
番頭はおもむろに着物の前をはだけると、下帯もずらして、へのこを取り出した。なかなかいい形のへのこだ。といってうさぎは神之介とつばめしか知らないが、咥えてみたいとつい思わせるところがあった。
うさぎが目を閉じ口を開くと番頭はうさぎの頭を抱え込み、口にへのこを突っ込んできた。長い、喉の奥にあたりむせそうになった。
番頭は心得たもので、うさぎがせき込む寸前にへのこを抜いた。
「どうだ、でかいだろう、これで喜ばしてほしいか」
うさぎはへのこを咥えたまま、頭を縦に振った。本心だ、どうやらうさぎはもともと淫乱だったのだと自分で思う。
神之介に開通されたのをきっかけに、男が欲しくて仕方がないのが本当のところだ。そうはいってもそこらの男とまぐわ宇のは何となく自分が安くなりそうで嫌だった。弟のつばめは仕方がないが、なるべく金や地位のある、へのこにあたりたかった。
三島屋の番頭ならまず文句はない。
番頭が、口の中に放った少しばかり生臭いものをうさぎは喉を鳴らして飲みほした。
「気に入った、風呂を馳走してやろう」
「そんなもったいない」
「気にするな、この家で儂にものをいうものは、もうおらん」
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