第7話 うさぎ動く

「鮨いりませんか」

 うさぎは山崎まで行商に来ている。鮨といえば近江の鮒鮨が知られているが、うさぎは、桂川で取った鮒やウグイを「なれずし」にして売っている。

 近江で修業をしてきた父親から習ったものだが、評判はいい。


「姉ちゃんが作ったのか」

「うん、味は近江のものには負けないよ」

「姉ちゃん込みなら買ってもいいけどな」

「おあいにくさま、魚は売っても体は売りません」

「なんだ、だめか。好みなんだけどな、いい尻してる」

 町の人はおおらかだ、卑猥な言葉でも嫌な感じはしない。


 山崎は山城と摂津の境にある邑だ。古くから荏胡麻油の権利を握っており、『大山崎油座』は全国の油商人を牛耳っている。

 従って裕福な商人も多く、行商に来るとそこそこの稼ぎにはなった。


 ただ今回に限って、行商は隠れ蓑だ。もみじを讒言した油問屋の三島屋を調べに来たのだ。

 三島屋は座の中でも有力な問屋で、うさぎもその評判は知っていた。その三島屋がつい先日、賊に襲われ金を奪われた。それどころか、主人が殺され内儀と番頭が手傷を負うことになった。

 それが、もみじが店の主人に呼ばれ、神事という名の商売をした翌日だったという。

 もみじの話では、明け方に帰ったというが、店の内儀と番頭は全く異なったことを言ったらしい。

 賊の中に女がいた。それが朝に帰ったはずの、もみじだったと証言したのだ。


 ここらの話は、所司代から山上が聞いた話だった。

 もみじを責めて、犯行を語らせ、盗人の名前を吐かす。あとはまとめて首を刎ねてそれで一件落着。三宅はそう目論んでいると所司代に報告したそうだ。

 彼にとって盗人が誰であっても関係はない、晒し首が並べばいいだけのことだ。


 その前に、三宅を山上が斬ったことで、盗人に仕立て上げられるものが誰かは、わからなくなった。

 そのことで、咎人に仕立て上げられるはずだった者の命も、救ったことになる。もっとも向こうはそんなことは全く知らないことかもしれない。


「三島屋さん、大変だったとか」

「ああ、旦那が殺されてな、惨いことだ」

「お内儀と番頭さんも何か手傷を負ったとか」

「ああ、あの人たちは運がよかったのか、大したことはないらしい」

「四十九日も済んでないのに、もう店を開いているらしい、なかなか銭の亡者だな」

「あの二人にすれば、旦那がなくなったのはどうだったのかな、なんか裏で乳繰り合ってたって評判だから」

「おい、あんまり」

「いけね、ま、いまのは冗談」


 うさぎは、いくつかの鮨を売り上げると、礼を言い、その場を後にした。

 店をやっているということなら、行ってみるかと思ったのだ。

 道を歩きながら、一昨日のことを思い出していた。


 神之介の助けられて戻って来たもみじは素っ裸になると川に飛び込んだ。顔を洗い口を丹念にすすいだ。腰まで水につかると、手を一生懸命に動かしている。たぶんほとを洗っているのだろうと思った。

 捕り手だけでなく侍も下司の顔をしていた、もみじがどんな目にあわされたかは想像がついた。


「神之介様、あたしを清めてください」

 犯され、汚されたほとを神之介のへのこで浄化したい、その気持ちはうさぎにもわかった。

 しかし、だからといって、あそこまで大きな声をあげて、よがらなくてもいいだろう、うさぎはつい覗いてしまった。


 神之介の膝の上で動く白い体を、太いへのこが貫いている。自分もしてほしい、つい手が着物の奥に伸びた。

 後ろから、乳房を揉まれた。身体に電流が走る。

「誰」

 振り向くと、弟のつばめが大きく膨らんだへのこを握って立っていた。


「姉ちゃん、あんなの見たらおらの、硬くなってもうだめだ、姉ちゃんに入れさせて」

 なに言ってるのといおうかと思ったけれど、それもいいかと思った。

「おいで」


 家に戻り、うさぎはつばめをあおむけに寝せた。着物の前を開けると、つばめのへのこはしっかりと上を向いてそそり立っている。皮も向け、てかったものはなかなかだ、子ともだとばかり思っていたが、いつの間にこんなに。

「今日だけだよ、明日からはもみじとするんだよ」


 勝手に決めているが、住まわせてやっているんだ、それぐらいはかまわないだろう。

 うさぎのほとももう濡れている、つばめの上にまたがると、ゆっくりと腰を沈めた。

 なにかわからないものが、背中を駆け抜ける。寒気とは違うものでぞくぞくする、思わず口から声が漏れた。

 神之介ほどではないが、つばめのものも十分使える。


 つばめはあっという間に、うさぎの中に放って果てた。物足りなかった。

「だめじゃない、自分ばっかり、もう一回できるよね」

「うん、姉ちゃんの中は、五本指よりずっといい」


 うさぎは、今度は茣蓙の上に自分が寝そべると脚を開いた。

「ちゃんと乳も吸ってよ」


 結局、四つした。さすがにぐったりとしたうさぎの、あそこからはつばめの出したものが、あふれ出してきていた。


 そんなことを思い出すと、ほとがじんわりと濡れてくるのがわかる。

 さっきの男の誰かとすればよかったかな、そんなことをちらっと思った。

 神之介として以来、うさぎは淫乱な女になっている。


 三島屋は、すでに普通に商いをしていた。物売りのうさぎは客ではない、玄関から声をかけるのははばかられた。店の裏に回った。三島屋の普請についてはもみじから聞いていた。さて、やるか。うさぎは褌のひもを締めなおした。もちろん物の例えで褌をしているわけではない。













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