青春なんて分からない

『青春を楽しもう!』

スマホに表示されたそんな広告を見て、私は鼻で笑った。

「青春なんて、結局若い時の記憶を美化したものに過ぎないじゃん。」

受験勉強が終わり、遂に始まった憧れの高校生活。数ヶ月胸を高鳴らせて過ごした結果がこれだ。新しい日常も、慣れればただの平凡な日々に過ぎなかった。物語のような大きな困難を乗り越えろ!みたいな事もなければ、美人な転入生もやって来ない。好きな子を助けようとしてトラックに引かれ異世界転生…なんて論外だし、恋愛もののような純粋で完璧なイケメンも美女もいない。ただ勉強して友人(かもしれない人)とちょっと話して、後は引きこもってゲームするような、何気ない毎日。中学の時から何も変わっちゃいない。むしろちょっと厳しくなって嫌になるくらいだ。

「あーやめたいなー高校。」

休日、誰もいない自分の部屋でのんびり呟く。とはいえ現代社会は残酷なもので、安定した給料?だとか生活?を考えれば高校に通わざるを得ない。そもそもそんなこと両親が許してくれるはずもなく。あー人生めんどくさいなーなんて思いながら、布団の上でただただ考え事をする。高校生は忙しい。やりたいことよりもやらなければいけない事の方が多くて、それをこなすために皆頑張っている。クラスメイトも、友人も、皆。

「頑張らなきゃなー」

1人、呟く。頑張らなきゃ。頑張らないと、周りに置いていかれてしまうから。立派な大人になれないから。

…でも結局「立派な大人」ってなんだろう?


「…まあ、どうでもいいや。」

イヤホンを耳に入れる。わたしの好きな音楽が流れ出す。目を閉じれば、世界の全てが好きな音で支配される。責任も未来も青春も全て忘れて、私は今日も、大好きなこの世界で息をするのだ。

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