第二十五章 ⑤それから(それからそれから)
某テレビ局・撮影スタジオ。
映画『リレーション・
レンジと羽衣は大ヒット御礼を兼ねて、
関西人の辛口司会者が、出演ゲストに手厳しい質問をぶつけるという
しかし、レンジは
早速、司会者が切り込む。
≪二ヶ月前、超美人女優のサユミさんと離婚が成立しましたね。慰謝料はまさかのゼロ円って! ……ほんまですか?≫
「はい、そうなんです。まさかのゼロ円でした」
≪しかし、サユミさんは随分イメージ変わりましたね! 変わりすぎやろっ! って突っ込みた入れたいくらいですわ≫
「いえ。実は以前から変わっていません。サユミはもともとあの通りの男勝りの気質でした。数年間の偽装結婚も『マンガみたいだったわね!』と笑い飛ばしてくれました」
≪しかしねえ……。女優サユミはレズビアンで? その恋人は女性マネージャーだったって? そりゃあ世間は驚きましたよ!≫
「サユミの
≪それで? レンジさんは? 八歳年下の一般女性と電撃再婚されたって? ……マジですかっ?≫
「はい。羽衣の母親と入籍いたしました。俺の過去はいろいろあって……。まあとにかく、
しかし、妻は過去の不徳を許してくれました。こんな至らぬ自分を『夫』として、羽衣の『父親』として、受け入れてくれました」
≪奥さんはどんな女性ですか?≫
「はは……(照)、とても可愛くて、
≪今はどこにお住まいで?≫
「
≪それはそれはっ、さぞや立派な! 嫌味なくらいの大豪邸なんでしょうねえ?≫
「うーん、どうでしょう? 木造二階建てで間取りは3LDKです。四十坪ほどの土地に二台分のカースペースがあります。あ、それからちょっとした花壇があります。にぎやかな『五人家族』になりました」
≪え? それって……、だいぶ普通ですやん! んん? 五人家族って! 奥さんのご両親も、ですか?≫
「はい。
≪へえっ! それじゃあ『三世代同居』ということですか? ぶっちゃけ、気が休まらないでしょう?≫
「いいえ。
≪ひええっ! レンちゃん、ですか?≫
「お陰様で『家族』ができました。すでに実の両親と死別してる俺にとって、義父母は『本当の親』そのものです」
≪…………。ああっ、そういえばっ! サユミさんの慰謝料ゼロ円で、浮いた分を『財団・リンカ』に寄付したのですか?≫
「あ、いや、それが……。お恥ずかしいことに、
≪へえ、珍しい! 寄付を断られることって、あるんですねえ?≫
「ですが次こそは! 受け取っていただけるように頑張ります。精一杯に働いて、日々の節約にも取り組むつもりです」
≪俳優レンジが『節約』! ですか?≫
「はい。妻から節約を学んでいます。こまめに電気を消したり、休日は激安スーパーをはしごして買い出しに行きます。ベランダにプランターを置いて野菜作りも始めました」
≪へええっ! 今までのイメージとは、だいぶ違いますねえ?≫
「はは、そうかも知れません。考えてみると所沢での生活は
≪確かに! レンジさんは今のほうがいい表情してますよ! ……正直言うと、昔はちょっといけ
「はは! それは大いに同感です。過去の自分は殺してやりたいほど憎たらしくて大嫌いです。……ですが今は、こんな俺を好きでいてくれる人が居ます。守るべき家族が居ます。だから、何があっても踏ん張ることができます」
≪では最後の質問です。レンジさん、羽衣さん! ……幸せですか?≫
レンジは大きく
「はいっ! たまらなく幸せです。妻が
羽衣は瞳を潤ませて伝える。
「……えっと、……見ていますか? 羽衣は今、とってもとっても幸せです! 子供の頃からの願いは全部、叶いました! ママの願いも、ジイジとバアバの願いも、全部全部っ、叶いました! ありがとうっ……、本当にありがとうございますっ」
司会者はおどけて笑う。
≪いやあ、参ったなあ! だいぶ不本意やけど、あんたらのこと好きになってしもうたわ! まあ、そんでも、
生配信が終了した。
人気トーク番組『ぶっちゃけ屋さん』には
当然ながらアンチ(嫌悪)は存在する。しかし世間の反応は
『リレーション・
俳優陣の鬼気迫る演技は国内外の高評価に繋がった。レンジは海外映画作品の主演が決定した。羽衣にはドラマや映画、女優業のオファーが殺到している。
共演者やスタッフたちも才能を見出されて大きな躍進を遂げていた。
それもこれも『グラビリズム』と『モアレリズム』の合わさった力に他ならないのだ。
レンジの罪過は未來王からの『
首筋に焼き付けられていた
それから。
ホットな
【父親レンジ公認! 人気女優・羽衣と世界的天才脚本家・輝章が堂々の交際宣言! 結婚秒読み! 『
果たして……。
『
それからそれから。
大空を突き抜けた遥か高き天上界は、なぜか浮足立っていた。
ソワソワワして気が
もしかすると、このフワフワウキウキする感覚は、めでたい『
物語は加速する。
さあさあっ、行くぞっ!
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