第二十四章 ④審判(処罰・パニッシュメント)
映画館・ステージ上。
空気が変わった。
しかしまだ観客席の『
きょろきょろ、辺りを見渡す。すると足元に小ぶりな『みかん』が
ぼそり、
「ああ、これが……、『
レンジはステージの床に
輝章はスッ、手を差し出す。
「あの、もし良かったら……。つかまってください」
レンジはビクッとして顔を上げた。気まずい心地にわずかに
「あ、あの……。ありがとう……」
「はは……、だいぶボロボロですね」
レンジの顔は泣きすぎて
輝章がぱんぱんと
「ああ、参ったな。ヨレヨレだ……」
「僕も、ボサボサです……」
ふたりは
「……大丈夫?」
輝章が腰を
ジャケットのポケットからハンカチを取り出す。そっと涙を
「ほら、僕につかまって?」
「わっ、あっ、あのっ! ありがとうございますっ」
羽衣の涙はピタリ、止まった。
輝章は床に並んだ小さいみかんを
「さあ、レンジさん、羽衣さん! 『
「はいっ」
羽衣は大きな声で返事をした。レンジは神妙な
「…………! ううう?」
「うっ、わあっ!
「ゴホッゴホッ……、ゔゔっ、ぐぐっ……」
三人の顔はくしゃくしゃになった。あまりの酸っぱさに思わず
涙目になった輝章は
「これは……、なかなか素敵な制裁ですね」
「……はい」
「……本当に」
なぜだか笑いが込み上げてきて吹き出した。ひとしきり笑った。
がやがやがや…………
観客席がざわめいている。いつの間にか会場に熱気が戻っていた。静止していた『
輝章はすぐさまマイクを握る。観客席に向かって言葉を発した。
「『リレーション・
盛大な拍手と歓声が起こった。
「そして本日は、皆さまにご承知おきいただきたい『重大発表』があります! ……この作品の出演者であるレンジさんと羽衣さんは、『実の親子』ですっ!」
ザワッ? ザワザワザワッ…………!
観客席がどよめいた。無数のフラッシュが光る。芸能記者たちは
「映画のシナリオではレンジさんと羽衣さんは愛人関係にありました。しかし当然ながらそれはフィクション(虚構)です。そして世間を騒がせている不倫の噂は完全なるデマ(流言)です。真実はただひとつ。おふたりが正真正銘の親子である、ということです」
スマホに速報ニュースが流された。
「生きていく道のりには複雑な問題や
しかし、離れ
そこで、皆さまにお願いがあります!
レンジさんと羽衣さんが必死に乗り越えてきた『過去』を興味本位に
観客は共感して拍手で
輝章は
「それからもうひとつ、お伝えしたいことがあります。……僕には、心から尊敬する
僕は今ここで決意表明をします。……この先の未來は、彼女の『透明な心』に恥じない生き方をしていきます!」
記者からの質問が飛ぶ。
≪輝章監督! それは監督の特別な女性ということですよね? 恋人、ですか?≫
輝章は即答する。
「いいえ、違います! 彼女には素敵な恋人が
会場はふわふわした空気が
心身が癒されて優しさに包まれる。温かな慈悲を感じて満たされた柔らかい心地だった。希望が沸きあがってウズウズする。
『
控え室にて。
レンジが改まって
「輝章監督! この度は……、あの、何と言ったらいいか…………」
輝章は笑い出す。
「あれ? なんでしたっけ? ジャバラみかんが
羽衣が同意する。
「もう本当にっ! 酸っぱすぎてビックリしちゃったっ! だけど凛花さんの言っていたとおり、お料理とかお菓子に使うとおいしいのかも!」
「うん、確かに。いろいろな料理に合いそうだよね。今度取り寄せて自宅で試作してみようかな」
「じゃっ、じゃあ! そのときには羽衣も誘ってください! こう見えて、お料理もお菓子作りも得意なんですっ! ご迷惑じゃなければですが……」
ふと輝章は羽衣に視線を向けた。瞳を潤ませて恥じらいながらも勇気を振り絞っている。その切実さが、
「……。そうだね。じゃあ、
「わっ、わあっ! はいっ!」
羽衣は満面の笑顔になって飛び跳ねた。
レンジの
しかし
映画館の上空。
雲を突き抜けた遥か天空に『
その両脇には
「未來王! この度は寛大なる『
「未來王の『
未來王は
「ハハ。おふたりにはあれこれと指示を出してしまって申し訳ありませんでした。まああとは人間の秘めたポテンシャルに
「とっ、とんでもございません……!」
「はっ!
「…………。もういい加減に、敬語はやめてくださいませんか? 古臭いのも堅苦しいのも好きではありません」
「ああ、は、はあ……」
「は……はい」
「さあ、いよいよ次のステージです。今年の
「はっ!」
未來王は
そしてその
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