第二十四章 ②審判(懇願・クレイブ)
映画館・ステージ上。
レンジは頭上を見上げて
「もしも羽衣があなたと同じ目に
たとえ殺せなかったとしても、強い
凛花さん、お願いです。どうか制裁をお与えください。」
「……」
「時すでに遅しではありますが、被害者家族の悲嘆や苦悩を理解できました。だからこそ、この罪は決して
凛花は問う。
「レンジさんにとっての『制裁』は何ですか? 自己満足のための手段ですか?」
「え?」
「今ここで、あなたが命を捨てたとします。……それが一体何になるというのですか? 恐らく、
「し、しかし……」
「断言します。レンジさんが制裁によって永眠したとしても誰も幸せになりません。新たな苦悩の種が
「じゃ、じゃあっ、俺はどうしたらっ……!」
凛花は
「レンジさん、生きてください。恥も
本物の幸せは、温かくて尊い。決して派手ではありませんが、思いやりの積み重ねから得られるかけがえのないものです。
ご家族と共に本物の幸せを掴んでください。そしてこれから先は、羽衣さんの自慢のお父さんになってください……」
レンジは
凛花はゆっくりと歩を進める。
「こんにちは。驚かせてしまってごめんなさい。どうしても直接お伝えしたいことがあったので羽衣さんに会いに来ました」
「羽衣に……?」
「はい。私から羽衣さんに重要なお願いがあります。聞いていただけますか?」
「は、はいっ。できることならっ……」
「羽衣さんには、幼い頃から『神様』とか『サンタクロース』とか『彦星・織姫』に祈っていた『願い事』がありますよね? その全てをレンジさんに今すぐ伝えてください。レンジさんが叶えてくれます」
「え、えっと……。でも、……いいの? だって凛花さんはレンジさんに
「ふふ。あれ? どうだったかな? もしかしたら誰かに『忘却の魔法』をかけられたのかもしれません。覚えていません」
「嘘っ! だってさっき
「もう十五年前のことです。つぶさに覚えていません」
「……。ねえ凛花さん、これだけは正直に答えて? レンジさんのせいで赤ちゃんを産めない身体になっちゃったの?」
「はい」
「……! 本当なの? あ……、どっ、どうしよう……」
「ですが今、私はとっても元気です。それにもう
「本当にっ? もう怒ってないの? レンジさんを
「ふふ。はいっ! もう全然怒っていません!
時間がありません。幼い頃からの羽衣さんの『願い』を今すぐ伝えてください」
「はっ、はいっ!」
羽衣は『願い』を伝える。
「羽衣はね、ずっと前からお父さんの帰りを待っていたの。いつか『ただいま』って帰って来てくれますように、って願っていたの。そしてママとジイジとバアバと一緒に仲良く暮らせますように。家族がそろってご飯を食べられますように。って……。いっぱい、いっぱいお願いしていたの……」
「あ、あ、あ、
レンジは
尽きることのない悔恨の念が
ぼたり、ぼたり……、大粒の涙がステージの床を濡らしていた。
凛花は優しく微笑む。
「レンジさん、私からもお願いします。どうか羽衣さんの『願い』を、叶えてあげてください」
ふわり…………
その
……遥か
天使の
ふわふわして地に足がつかない……。気分が
柔らかなベールに包み込まれている。
……ああ、なんてあたたかいのだろう。
まるで
脳内は不思議な感覚に支配されていた。呼吸がゆっくりになり、心身ともに
バタリ……。
レンジは意識を失った。
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