第二十三章 ③制裁(父と娘・リレーションシップ)
映画館・ステージ上。
レンジは覚悟を定めた。コン太はわずかな温情を与える。
「イヒヒ……、
レンジは頷く。
「はい。少しの時間でいいので、
「オッケー、オッケーッ! じゃあ大サービスして『十分間』差し上げるねえ! それでは、……どうぞ?」
レンジは羽衣の正面に立った。フッと目を細めて柔らかい笑顔を浮かべた。
そうして穏やかに語り始めた。
「
「え? え? 待って……。まるでお別れの挨拶みたいになってるよ?」
「情けないことに映画の撮影期間はいつも君に助けられてばかりだった。……俺は君が本当の娘のように思えてしまってね。可愛くて可愛くて
「レンジ、さん……」
「ふたりで買い物に行ったり、食事に行ったりしたね。一緒に過ごした時間は宝だよ。とても楽しかった。ありがとう」
羽衣は
「ああ、頼むから泣かないでくれ。羽衣が悲しい顔をしていると俺まで泣きたくなってしまうよ。……君は素敵な女性だ。きっと人格と実力を兼ね備えた素晴らしい女優になるだろう。芸能界は厳しい世界だが必ず成功する。俺が保証する」
「いやあっ、いやだ……。うっ、ううっ」
「
レンジは
「それから羽衣。悪いが『伝言』を頼まれてくれないか? 羽衣のママ(ナナ)に伝えてほしい。……【俺を
羽衣は首を振って泣きじゃくる。
「そしてこれが最後のお願いだ。どうかずっとママの味方でいてほしい。……頑張り屋のママのことをこの先も支えて。ママが困ったときには力になって。助けてあげてくれ」
レンジは両手で羽衣の
「俺にとって羽衣はかけがえのない存在だった。我が子のように
「レッ、レンジさん、やめてっ。もう会えないなんて
十分が経過した。
「ブッ、ブブーッ! はいはい時間切れ!」
コン太は改まって申し開く。
「ねえねえレンジさん、知っていたかい? あんたの首筋にあるのは落雷による
「はい…………」
「あの日、あんたは仕事で宇和島を訪れていた。
「……はい」
「
「は、い……」
「レンジさんにわかるかい? 幼女と家族が、どれほどの苦痛の日々を過ごしてきたか。どれほどの涙を流してきたか。一度でも想像したことがあるかい?」
「そ、それは……」
「無理だよねえ? だってあんたはチヤホヤされて調子に乗ってのうのうと生きていた。
レンジは右手で首筋の『証憑』を触る。そうして熟知する。
……まさに
過去から現在に至るまで、積み重ねた『善』も『悪』も
レンジは腹を
「すべて
「イヒヒ……、りょーかいっ」
在狼(コン太)はくるり、回転する。そうして呂色九頭龍神の姿に
次の瞬間。凄まじい怒気が放たれた。どす黒い
羽衣はゾッとして
コン太は不気味な笑みを浮かべて予告する。
「まずはあんたの首筋においらの『
積もり積もった
「さあさあ覚悟はいいかい? 消え去れっ! この鬼畜めえ……っ」
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