第二十三章 ②制裁(証憑・エビデンス)
映画館・ステージ上。
コン太の指はレンジを向いていた。
レンジは
しかし素朴な疑問を投げかける。
「あの、
羽衣は目を丸くする。
「ええっ? レンジさんは契約内容を知らないの? じゃあ『
コン太はニヤリとする。
「ではでは特別に! 羽衣チャンの質問にだけ答えてあげるねえ? この俳優レンジは龍神界を敵に回した極悪人なんだ。その証拠は首筋にある
羽衣は背伸びして
「あ、ほんとだ。
「この空蝉の焼き印は龍神界から指名手配された『
「え? だけど、それって…。あ、あのっ……?」
「ああーっ!
「でっ、でも…………っ」
「おいらの邪魔をすることは許さない。……あんたに用はないんだよっ!」
コン太はヌゥッ、顔を近づける。
「ねえねえレンジさん、覚えてる? 心の中で願っていたよねえ? 『俺を殺してくれ』ってさあ?」
「え、あ、ああっ……!」
「イヒヒッ、思い出したかい?」
「はい……」
「だ、か、ら! 本日わざわざ願いを叶えにきてあげたってわけ! 優しいおいらに感謝してよねえ?」
「レンジさん……、あなたは長きにわたって芸能界で活躍されてきました。そして人格を具えた名俳優だと尊敬され
「え……? あの? それは……?」
「あなたは過去に二度、
レンジは息を吐いて肩を落とした。
「ああ、やはり……。ようやく
「はい。彼(呂色九頭龍神)から詳細を聞いて脚本を書きあげました。伝達されたのは『所沢』と『宇和島』でのインシデント(出来事)でした。……正直、耳を疑いました。そして僕は『俳優レンジ』を心の底から
「そう、でしたか……」
「レンジさん。あなたの役者としての実力は本物です。その演技力に心から
「……はい」
「トラウマに時効などありません。被害者の心の傷は想像を絶するはずです」
「確かに……。そのとおりです」
「それだけではありません。十五年前、あなたがレイプした宇和島の幼女は、僕の『恩人』です。僕にとって、かけがえのない
「え…………?」
「彼女は夢を諦めかけていた僕に勇気を与えてくれました。『あなたの未來はあなたのもの』そう言って励ましてくれました。だから僕は夢を叶えることができました。脚本家としての人生があるのは、すべて彼女のお陰なのです」
「そ、そんな…………」
「だから、許せない……。僕の大切な人を傷つけた『
レンジはすぐさま頭を下げた。
「弁明の余地はありません。……申し訳、ありませんでした…………」
コン太は
「へええ?
「いや……、はい」
「いいかい? 俳優レンジは最低最悪の犯罪者だ。それなのに大衆に支持されて! 偉そうに踏ん反り返って! チヤホヤされていい気になって! ずっとずっと優雅に暮らしてきたんだろう?」
「はい……」
「ねえねえ、知っているかい? レイプって犯罪なんだよ? あんたが大物俳優として華々しく活躍する裏側でさあ! 被害者は
「は、い…………」
「宇和島の幼女はさあ、すっごく優しくて我慢強いんだ。だから家族に心配かけないようにって
「あ、
「ねえねえ? 今までにどれほどの人間を
レンジは
「はい。間違いありません。すべて在狼くんの言うとおりです。……俺は破廉恥なレイプ犯です。最低最悪の鬼畜です」
「うんうんっ、そうだよねえ! だから制裁されても仕方がないよねえ?」
「はい。すべては
レンジはすべてを受け入れた。
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