第二十二章 ③マサルとウオン
千代田区永田町。
スチャ……ッ!
凛花は
「わあっ、エスカレーター! 都会的な神社ですね! かわいい御猿のマサルさん、素敵な神社に連れて来てくれてありがとう!」
「ウッキッキッ!」
凛花に頭を撫でられた
イレーズが笑う。
「ククッ! 相変わらずの
「はい! 未來王から
「うん、それとさ。凛花の透き通った心がマサルに伝わっているんだと思うよ?」
「わあっ、そうだったら嬉しいなあ」
凛花とイレーズは手水を浄め、作法に
その後、悲劇の武将・
分霊された神様の
イレーズが簡単にレクチャーする。
「山王信仰の
「
「マサルは縁起物なんだ。魔が去る。
「社殿の前に『夫婦の神猿像』がありました。
「猿田彦大神(
「わあ! 今度行ってみようかな! 椿とりめし……、食べたいなあ」
「ククッ……。それとさ伊勢神宮内宮には『猿田彦神社』と『
「そうなのですね」
「まあ色々あって、高千穂(天安河原)の天岩窟に
「はい! その天岩窟の岩扉(岩戸)を怪力の神様(
「クク……。『天岩戸伝説』って確かそんなだったよね? 神様たちもなかなかヤンチャで人間臭いよね」
「ふふ。ちょっとだけ親近感、です」
「ウキキキキキッ!」
「あ、
イレーズが名を呼んだ。ウオンはイレーズに深々と頭を下げる。凛花は瞳を輝かす。
「わあ、もしかして! 秩父札所二十番のウオンさんですか?」
ウオンはニイッ、笑った。
「初めまして、凛花さん。今日は『ゴン子』の
イレーズは目を見開く。
「ゴン子(未來王)は……、なんて?」
「はい。内田家(札所二十番)に感謝を示す提案をしていただきました。では、そのままの言葉でお伝えします」
「うん」
宇音はコホン、軽く
「『おい、ウオン! 良いことを思いついたぞ! 『ビー玉交換』はどうだ? 札所二十番でウオンとビー玉交換をするんだよ! 参拝者がビー玉を自宅から持ってきてもいいし、
イレーズはふるふると肩を震わせる。
「クッ、クククッ! ウオン、似てるよ! ゴン子に似てる! 物まね上手だね?」
ウオンは頬をふくらます。
「そうじゃなくてっ! イレーズの意見を聞きたいんですっ」
「ああ、ごめんごめん。良いんじゃない? 何度も参拝して交換して。ビー玉集めをしてもいいしさ」
「ビー玉の大きさや色はランダム(
「大きめのビー玉だったら玄関やリビングとか窓辺とか。
凛花は瞳を輝かす。
「わあ! 『コン太&ウオン
ウオンはぺこり、頭を下げた。
「凛花さん、ありがとう。内田家当主と相談して準備ができたらコン太に知らせます」
「はい! ノアとコン太と
イレーズが不服を申し立てる。
「あのさあ、凛花。これってどう考えても俺と一緒に行く、って流れなんじゃないの?」
「あ、ああっ、ほんとに! 確かにそうですよねっ! みんなで一緒に行きましょう」
「うーん…………。わかった」
イレーズは少し
「ふははっ。こんなに表情豊かなイレーズを初めて見ました! ゴン子が言っていた通りです。確かに凛花さんは賢くて憎めない龍使いのようですね」
「ん。可愛いだろ? あげないよ?」
「はい。『クールなイレーズが
「ああ、まったくさ。そのとおりなんだよ。どうやら好意を抱いた相手の恋愛的心情だけは
「
「ククッ、
ウオンは背筋を伸ばす。
「凛花さん、イレーズが大変優しくなりました。龍神界のひとりとしてお礼を伝えさせてください。ありがとうございます」
「ええっ? とんでもないですっ! お礼を言われるようなことは何もしていません! 私はただ、イレーズさんのことが大好きなだけです…………」
不意うち発言にイレーズは照れる。ウオンとマサルは顔を見合わせて笑う。
「八坂神社はスサノオノミコトとクイシナダヒメノミコトの夫婦神です。是非とも猿田彦神社と併せてお詣りしてください。恋人同士にはオススメです」
「ウッキッキッキッキッ!」
金獅子猿マサルは手を叩いて喜んだ。イレーズと見つめ合う凛花の顔はマサルに負けないくらい赤くなった。
夕刻。帰り際にイレーズが問いかけた。
「あのさ、凛花。女龍神たちとの計画のことだけど…………」
「あ(バレてる)! あのっ、やはり許されないのでしょうか? 羽衣さんにどうしても伝えたいことがあって……」
「うん、それは分かる。だけどさ、凛花は本当にそれでいいの?」
「はい」
「……。決意は固い?」
「はい」
「そっか。じゃあ俺は凛花の味方をするよ。本音はすっごく嫌だけどさ。……味方する」
「はいっ! イレーズさん、ありがとう……」
「じゃあさ。ご
「え……?」
チュ……。イレーズは凛花の
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