第二十二章 ②待ち合わせ
熊野市木本町・鬼ヶ城。
春寒の早朝。ノアと凛花は鬼ヶ城の浜辺に立っていた。『
任務を終えて帰宅しようとノアの背に乗る。その瞬間、遠くから魅惑的なハスキーボイスが聞こえてきた。
「あっ、待って待って! 凛花っ、ノアッ! ちょっと待って!」
スウウッ……!
目の前に龍神界のセクシー
「やあ、おふたりさん。こうして対面するのは
ノアは
「あら、任務終了後に声を掛けてくるなんて初めてね。……まさか、悲報ではないわよね?」
凛花は久々の対面を喜んだ。
「あっ、
「ん? ああ! アハハッ! もしかして凛花、気にしていたのかな? いえいえ、どういたしまして! こちらこそありがとう」
ノアはクールに問う。
「ねえ、それより。何か用事なの?」
「ああ、そうだった。イレーズから凛花に伝言を
「はっ、あっ、ありがとうございます……」
「アハハッ、凛花! 赤くなってるよ? まったく可愛いなあ!」
ノアは
「もうっ、雷紋ったら! 凛花を
「ああ、ハイハイ(怖い怖い)。『今日の午後二時に横浜『
「あっ! はっ、はっ、はいっ」
「じゃあ、またね!」
雷紋は
横浜市西区宮崎町。
電車を乗り継いで桜木町駅に下車した。ミニリュックを背負った凛花は約束の場所に向かって早足で歩いていた。
……イレーズさんに会うのは今日が三度目だ。過去二度(出雲と三峯)は不意打ちだったから寝癖すら直していなかった。
だからこそ! 今日の寝ぐせ直しに
悩みに悩んでワンピースをチョイスした。靴もアウターも新品なのだ。
「凛花っ、とってもかわいいわ! これでイレーズもメロメロよ!」
甘々ノアは手放しで
駅から徒歩十分。坂道を
階段を登って待ち合わせ場所の『ふれあい広場』の隅っこに立った。
……ストンッ!
目の前にキラッキラのイレーズが現れた。三峯神社で会った時と同様の白いゴシック調の服装にロングブーツの『洋装』だった。
イレーズが美しく微笑む。
「凛花、お待たせ。……あれ? いつも可愛いけど今日はいつも以上に可愛いね?」
「あっ! あわわわわわ……。あ、あ、りがと、ござ、ます」
凛花は動揺して言葉がおかしくなった。
「ククッ。まずはお詣り、しようか?」
ふたりは
(今日もとっても幸せです。ありがとうございます。今よりも成長できるよう頑張ります……)
参拝を終えて『古木クスノキ』の前に移動した。イレーズは凛花の手を取る。
……グンッ! 空高く上昇した。
「じゃあ、『横浜デート』しようか」
「はいっ!」
イレーズの提案で『横浜三塔』を巡る。三塔とは横浜県庁(キングの塔)・横浜税関(クイーンの塔)・横浜開港記念館(ジャックの塔)だ。
この三塔を一日で
イレーズがおどけて肩をすぼめた。
「ま、こんな迷信。普段なら絶対に信じないんだけどね? 凛花となら一緒に巡ってみたいって思えてさ」
「はいっ! ご一緒できて嬉しいです」
「……クククッ! だけどさ。こんなのあまりに俺らしくないみたいでさ。『イレーズの恋人は
凛花は目を丸くする。
「仲間って『
「ん。まあ、そうだね。俺にとって極等祭司の三人は頼れる兄貴みたいなものかな。みんな『未來王』と家族なんだ。そして四人衆それぞれに王との『特別な
「わあっ、深い信頼の絆……。素敵です!」
ふたりは歴史ある
『
「キング、クイーン、ジャックなんて。命名が
「昭和初期に外国船員がトランプカードに見立てて
「はい。歴史を感じます。三塔は船員の方々の『
「うん、そうかもね」
「私、歴史的建造物とか、煉瓦造りの建物が大好きなんです。だから住まいも一目惚れして決めました」
「所沢市、だったよね」
「はい! ノアと二人暮らしです。コン太が週に六、七回遊びに来ます。イレーズさんも今度遊びにいらしてください」
「ん。行くよ(ノアが嫌がりそうだけど)」
「あっ、モンテローザの『横浜三塔スティックケーキ』買っていいですか? ノアのお土産にしたいので」
「じゃあついでにさ。アイスクリーム食べていい? 一度食べてみたくてさ」
イレーズの要望に凛花は驚く。
「ええっ? アイスクリーム、食べたことないの?」
「うん。冷たいお菓子、らしいね?」
「はい。美味しくてビックリしますよ?」
……ストンッ。
ふたりは地上に降りた。そうして『できたて横濱馬車道アイス』の行列に並んだ。
明治二年。馬車道に日本初の『
そんな折、伊勢山皇大神宮の
それから
「わ、冷たい。あ、ヤバい。……かなり
イレーズが無邪気に笑った。
……わあ! イレーズさん、かわいいっ!
スチャ…………ッ!
目の前にド派手な金ぴか
「あ、マサル……。急にどうしたの?」
「ウキッ! ウキキキキッ!」
金獅子猿『マサル』はイレーズと凛花にジェスチャー(身振り手振り)をしてアピールする。どうやら『背中に乗れ!』と
「うーん。じゃあ凛花も一緒に行くよ?」
「ウッキッキッ!」
イレーズは凛花の手を取ると『金獅子猿マサル』の背に乗った。
ピュン…………ッ!
そうしてどこかへ
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