第二十一章 ⑤凛花の告白
三峯の丘の上。
イレーズが肩を震わせる。
「クククッ! 分かっただろう? 『ゴン子』は『未來王』が
「はい。まだ頭が混乱していますが……」
「ああ、そうだ。先ほどの話には続きがある」
……日没後、冷たい風が音を立てて山を吹き抜ける。
約束通りゴン子が迎えに来てくれた。ゴン子は俺の手をぐいぐい引っ張って
そうして『本来の御姿』を現した。
ま、
放たれる光は
……見えたっ! 目の前にスラリとした若い男性が立っていた。
思わず息を呑む。そして瞬時に察した。間違いない! この御方こそが唯一無二なる『未來王』だ! 俺は未來王の真の御姿をこの目で拝した。
あまりの美しさに。あまりの崇高さに。あまりの
未來王が微笑む。
『お疲れさまでした。よく頑張りましたね』
穏やかなバスバリトンの声音が
『あなたに
「二十九歳……?」
『そうです。
「極等万能祭司、ですか?」
『はい。彼らは
「は、はあ……?」
『
イレーズは即座に自分の未來を
……俺は『未來王』の親友となり弟子となり『家族』になっていた。そして最高にイケてる極等万能祭司の仲間たちと『
『ご納得いただけましたでしょうか? イレーズが心を定めたならば我々は家族となります』
「……
喜びが
『ハハ。イレーズ、あなたはもう独りぼっちではありませんよ? これからの長い長い時間軸を皆で楽しく穏やかに過ごしましょう。まあ、任務に関しましては
「適当、で、いいのですか?」
『はい。中心に
俺は深く
「
『我が無二の友イレーズ。あなたは我らの大切な家族です。ですからもう敬語はやめてください。堅苦しいのは好きではありません』
「え……? あ、し、しかし……」
『偉そうに踏ん反り返っている
「は……? ははっ、クククッ!」
王のあまりに気さくな人柄に俺は思わず笑った。
『永遠の友、イレーズ! 共に未來に尽くしていきましょう! これからよろしく』
王は俺を包み込んでハグをした。そうして優しく頭を撫でてくれた。俺は未來王の
『よく頑張りました。……いい子だ』
「ううううっ、ううっ……、うわあああっっ」
俺は幼い子供のように大声で泣きじゃくった。嬉しくて嬉しくて幸せで幸せで涙が止まらなかった。
王が穏やかに微笑んだ。それは貴きアルカイックスマイルだった…………。
そよそよ……、たわやかな風が吹く。
凛花はイレーズに共鳴して伝える。
「私も未來王より『龍使い』の使命を与えられました。生きていて良かったと心の底から感じることができました。改めて、王より
イレーズは同意して
「
「そういうことでしたか! スマートでクレバーな太郎さんと『まん
「ククッ。ほんとに、ね?」
イレーズは愉快そうに笑う。
「未來王はさ。
「わあっ、すごいです! 何となくですが。愛される理由がよくわかる気がします」
「うん、王はさ。愛されたいとか、愛したいとか。理解されたいとか、従わせたいとか。感情を押し付けないんだ。ただ常に『
凛花は
「凛花は、さ。宇和島の家族に愛されて宝のように育てられてきた。俺が
イレーズが寂しそうに
凛花の瞳はみるみるうちに
……たとえ悪気が無かったとしても。自分本位な行動や言動によって誰かの心を傷つけていることがある。浅はかな対応によって傷口をえぐることもある。……私はイレーズさんを傷つけたくない。心を偽って嘘をつきたくない。だから今から誠意をもって向き合う!
凛花は強く決意して勢いよく立ち上がった。そしてイレーズの正面に向き合うと腰に手を当てて仁王立ちをした。
「宣言しますっ! 私はイレーズさんをお
イレーズは大きく目を見開く。ゴン子の真似をして仁王立ちしている凛花の両足はガクガクと震えていた。
「えっと、それで、あの……っ。もっ、もしも可能でしたら! 私を恋人に……、していただけないでしょうかっ?」
イレーズは少年のように無邪気に笑った。
「うん! じゃあ、凛花と俺は今日から『恋人』ってことでいい?」
「あ……、はっ、はい……っ!」
「……ああ、驚いたな。
凛花は照れながら
「私の初恋は……、イレーズさんです」
「やばい、嬉しすぎる……。だけど、ごめん。俺の初恋はゴン子かも……」
「ふふ。私もゴン子さんが大好きです! それに私にとって『太郎さん』だけは、ずっとずっと『特別な存在』です」
「ん。それはそうだね」
ふたりは見つめ合う。頬と耳が火照って熱くなる。寒いのにポカポカだ。
「あのっ! コン太に重箱のお弁当を持っていかれてしまったのでお腹が空いてしまいました。『味噌おでん』と『いも
照れ隠しに凛花が言う。
「ククク。じゃあ、俺も
「わあ、本当に? 大丈夫?」
「うーん、たぶん? それに凛花と一緒なら味を感じられるからさ。これから美味しいものをたくさん教えてくれる?」
「はいっ、それなら得意分野です!
「売店、行こうか?」
イレーズがスッと右手を差し出した。凛花は左手を重ねて添える。ふたりはそっと手を繋いで歩き出した。
ぶわ……っ!
無数の
「おっかえりい! 待っていたよ! 早く早くっ!」
「ほらほらっ! それでそれでっ?」
「えっと、あのね…………」
…………!
待ち構えていたノアとコン太から質問責めにされた。龍神カップルは涙を流す。凛花の
凛花とイレーズは
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