第二十一章 ②イレーズの過去(座敷童)
小次郎宅・別邸。
学童期になった坊やは、
下弦の月の夜。
ルナの命日。
そうして
「おっ、お前は……、坊や(ボン)、か?」
「おおっ!
「ルナッ、ルナッ! ルナやっ! ああっ、
時どき半狂乱で
「ボンよ。お前の母親ルナは読書人だった。お前も本が好きか? ここの書物は
ボンは答える。
「はい。すべて」
言われた小次郎は驚愕して立ち上がっていた。書斎の
そうしてゴクリ、息を
紙片にはこの国の『未来予想図』が
小次郎は
……どうやら
あろうことか。
「利益を
「戦勝方法を教えろ」
「
「さらなる
「絶世の美女はいないか」
「人々に
「もっと
「欲しい欲しい欲しい……。もっともっともっと……。足りない足りない……」
奴らの求めは尽きることがなかった。
奴らは
……下心丸出しでひたすらに奪うことだけを考えている。
奴らのターゲットはお人好しや善人である。甘く見られたものだ。
……
だけど
しかしたとえ本意でなくとも。悪党に知恵を与えてしまっている。間接的とはいえども悪事に手を染めてしまっている……。
幼い心は少しずつ罪悪感に
……俺の頭脳はもはや『
幼い頃から『
もう嫌だ、消え去りたい! そうだ、明日死のう…………。
肌寒い初冬の深夜、ベッドの中で決意した。
どうやって死のうか。もうすぐ死ねる。悲しいくらいワクワクした。
…………ユラリ、グラリ…………
部屋の空間がぐにゃり、
即座に
シュッ……! 部屋の中を小さな影が素早く動いて横切った。俺は思わず叫んだ。
「誰だっ? 出て来いっ!」
……三歳くらいの『
丸々肥えた
「もしかして……、『
問いかけると
「そうだ。お前はひとりか?」
質問を返された。俺は素直に返答した。
「うん、そうだよ」
「じゃあ、あたいと友達になってくれないか?」
「あたい、って。お前、女か?」
「寂しいんだ。だから友達になってくれ」
「そうか。お前は寂しいのか……」
座敷童の髪は
俺はベッドから降りて丸々した座敷童に向き合った。くしゃり……、前髪をかき上げて顔を見定める。
「よせっ、やめろっ! 見るなっ!」
座敷童は顔を見られるのが
肉付きのいい輪郭、細い半月目、低い鼻、への字口。まるで民話の金太郎のような愛嬌のある
顔を見られて恥ずかし
「やめろっ、この
俺は『
……この
ドキンッ! 胸の鼓動が高鳴った。こんなに心が弾んだことはない。
「ククッ! お前はかわいい、ね?」
「は……? お、おいっ、嘘を言うな! 馬鹿を言うなっ!
「え、そうかな? すっごく
「よせっ、やめろっ!
座敷童は照れて赤くなって
「クククッ! 俺はさあ、人の心が読めるんだ。だからわかるよ。お前は
「違う! あたいは『
「だけどさ。『悪い奴』でもないよね? それに俺と友達になってくれるんだろう? だったら名前を教えてくれ」
「…………。『ゴン子』だ」
「そうか、ゴン子か。そうだ、俺には名前がないから教えられないや。ごめん……」
「……そのようだな」
「それにしても嬉しいな。俺に初めて友達ができたよっ!」
「あたいもお前と友達になれて嬉しいぞ。よろしくな」
「うん、よろしく」
ゴン子と俺は握手をした。
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