第二十一章 ①イレーズの過去(出生)
三峯の丘の上。
イレーズが前置きする。
「この『昔話』はさ。もしかすると少し不快(アンプレザント)な内容かもしれない。だから重く受け止めずにサラリと聞き流して欲しい」
「はい」
「俺が住む『
……あるところに。
ルナはやさぐれた
父親は
ある日。豪商の中年男『
たまたま通った裏路地で視界に
富者の小次郎に見初められたルナはたちまちに破格の値段で買い取られた。
しかし小次郎にはすでに妻子があった。ルナは『
小次郎屋敷はとある地域の一等地にあった。その広大な敷地の片隅に
もはや本妻や使用人たちの目もはばからない。
……ルナの肉体や精神や細胞までも独占したい。すべて
度を越した
小次郎はルナを別邸に閉じ込めた。
その矢先、ルナが妊娠した。
しかし嫉妬深い小次郎は一度たりとも医者に
ついに臨月を迎えた。別邸に
しかし産後の経過は最悪だった。
出産から十日後。ルナは静かに息を引き取った。
最愛の
「ルナッ! ルナッ! ああ頼むっ、生き返ってくれっ! ああっ、
永別の嘆きは凄まじい『
「ゔあああああっ……!」
産婆は小次郎の手によって
しかし悲劇はそれだけでは終わらなかった。嫉妬に狂った小次郎の妻が『別邸』に乗り込んできたのだ。
本妻は
本妻は
……グシャリッ! 憎き『
……グシャッ、グシャリ……!
本妻の目に光はない。完全に理性を消失していた。夫を奪われた『
別邸は血の海だ。
ルナの
小次郎は
「ふう…………」
小さく息を吐き出した小次郎は
「やれやれ……。それにしても派手に
「…………」
「お前には長らく
「あ、あなた……っ」
「しかしどうやら
本妻は即答する。
「はい。手打ちにいたします」
「そうか。ではこれはお前にやろう」
小次郎はルナの左手薬指から『
「ありがとうございます。この指輪も
小次郎は
「今すぐこの
小次郎の高い社会的地位によるものだろうか。本妻の
ルナから産み落とされた
幼少期になった。
名も無き不要物の『坊や』は相変わらず別邸に
成長しても特にやることはなかった。しかし退屈しのぎはできた。
どうやら母親ルナは
俺は
おそらく。生まれながらに不思議な能力が
さらに集中する。どうやら俺には未來を予見できる特殊頭脳の持ち主らしい。
この時代はこの程度なのか? 遅れている…………。
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