第十九章 ①レンジの挙動(コンダクト)
火曜日の午後三時。レンジは緑溢れる所沢航空記念公園に到着した。有料パーキングに愛車のアルファードを停めた。
航空記念公園は
その広大な敷地には『航空発祥記念館』や無料ドッグラン。野外ステージや運動場など。多くの設備が点在している。
スポーツ大会やら文化イベントが
レンジの服装は上下セットアップのランニングウエア姿だった。そそくさとランニングシューズに
車から降りて
レンジは映画撮影の
そうして毎回同じ
……航空公園から並木が続く歩道を走って防衛医科大学病院前を通り抜ける。突き当たって左に曲がる。ガード下の歩行者専用通路をくぐって新所沢駅西口方面に向かう。
休憩ポイントの緑町中央公園で水分補給をする。
その後また走る。緑町三丁目の信号を左折して数キロ、宮本町『
これがレンジの定番コースなのだ。
しかし実のところ。本来の目的はジョギングではない。
……
この欲求をどうしても
レンジは周囲に
『
しかし『
最近は
だから羽衣の自宅(実家)は見知っていた。新所沢駅西口付近の公営住宅一階に母親と祖父母と四人で暮らしている。
俺は
MS(多発性硬化症)の祖父は羽衣が
静かで穏やかで優しい性格らしい。
祖母はスーパーの早朝の品出しバイトとコンビニのパートを掛け持ちしている。
働き者で料理が得意なのだという。
そして母親の名前は『ナナ』である。ナナは平日の昼間に四時間ほど近所の飲食店でアルバイトをしている。長時間労働ができないのは父親の
デイサービスは火曜と木曜の週二回。送迎車が公営団地の敷地内まで来てくれる。乗降の際には欠かさずナナが付き添っているのだという。
そうしてひと月前。ようやくナナの姿を
周囲の景観に
そして思わず息をのむ。
……ゴーンッ! ゴーンッ! 脳内で激しく鐘が鳴った。
ナナは二十数年という過ぎた年月を感じさせないほど若々しかった。昔より体形は少しぽっちゃりしたように見えた。しかしショートカットに大きな瞳。
ナナが『羽衣の母親』である。その事実が
俺の
帰宅してからも興奮が
ベッドに横になる。どうにも
……そして俺はいつもの夢を見る。十五年前から見続けているそれはまさしく『
……九つの黒光りした
『レンジさん、あんたって最低の最悪だよねえ? 理性の欠落した鬼畜だよねえ? ……鬼畜め! 鬼畜め! 鬼畜め! この恥知らずの、鬼畜めえ…………っ!』
「うっ、うあああああっ……!」
恐怖で震えあがって飛び起きた。ハアッ、ハアッ、呼吸が
ぶわっ、額からは冷たい汗が
……
俺を、許してくれ……!
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