第十七章 ⑤友人からの贈り物
稲佐の浜にそよ風が吹き抜ける。
凛花の体内に不思議な変化が起こっていた。
……あれ? 血液が逆流している? 背中が軽い。肩が軽い。頭のモヤモヤがクリアになって
幼少期(五歳)の頃から心の奥には何千本もの
年月の経過によって。家族から注がれる愛情によって。その心に刺さった毒針は少しずつ減っていった。だけど
その細くて鋭利な『
憎しみに
どす黒い嫌悪感を宿していた毒針。
すべてが跡形もなく消え去った。
心は寛大な『
柔らかく穏やかな光が差し込んでくる。心が洗われて澄み渡っていく。まるで生まれ変わったような
凛花は感動して震えた。
「うっ、うううっ……。幼少期から今まで。心の奥底ではずっと
凛花は大粒の涙を
「これほどまでに
何度も何度も礼を伝えた。
太郎は笑う。
「ハハハ、
「…………?」
「凛花さん、よく聞いてください。
イレーズは天才ゆえに気難しく見えるかもしれません。ですが実はとても
「……? はい」
ふたりは立ち上がる。砂をはらって向かい合う。
太郎は不意に空を見上げた。
「ああ、そろそろ時間だ。
それは小さな
「それは
「みかんも白い花を咲かせるので親しみを覚えます」
「
「わあ、そうなのですね!」
「その蒼い
「ありがとうございます。大切にします!」
太郎は思いついたように告げる。
「ああ、そうだ! もしもイレーズが凛花さんを
「……
「そうです。その
「わかりました。ですが、もうイレーズさんとお会いすることはないと思いますが?」
「ハハ、すぐに会いますよ。コン太とノアとともに。もう
「そうなのですか?」
「しかしイレーズの場合。この『御守りの
「……。はい」
「イレーズの
「…………? はい」
凛花は訳が分からない。首を
太郎は言い置く。
「凛花さんは稲佐の浜の美しい夕日を
シュンッ…………!
消えた。太郎は
凛花は
余りにハイテンポだった。そして余りに
……もしかしたら先ほどまでの出来事は夢だったのかも知れない。
思い切り自分の
どうやら夢ではないらしい。
凛花は出雲の『
ユーモアがあって少々せっかちな新たな友人『太郎さん』に。改めて心奥から感謝して。ひれ伏した。
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