第十五章 ②龍王神話
凛花はコン太の背から結界上にストンと降ろされた。
「わああっ! あれ? 落ちない……」
「イヒヒ、不思議だろう? 結界上にいれば地面に落ちないんだよ」
「うん! すごい経験しちゃった」
コン太がひそひそと話しかける。
「そうそう、内緒の内緒の秘密の話なんだけどさあ……」
「うん?」
「今や
「え? そうなの?」
「凛花や。いい機会だから我らの懐かしい思い出話を聞かせてあげよう」
「本当ですか! わあ、嬉しいです」
「今ではもうすでに
燦紋は目を閉じて古い記憶を呼び起こす。そうして
……昔々の話。
表の龍蛇神王燦紋と裏の黄金龍王トールは互いを尊敬し認め合う親友関係だった。
若かりし日の
我らはそこで
ミュウズへの想いが
無二なる友と話し合う。しかしどうしても互いに
ついに
そうしてミュウズを
壮絶なる戦いは数か月に及んだ。争いを制したのは表龍王の燦紋だった。トールはすでに虫の息だった。
「ミュウズ、幸せになれ……」
それだけ言い置いて。トールは傷だらけの龍体を引きずりながら
そのまま引き
ミュウズは
「燦紋さま、申し訳ありません。私は黄金龍王トールを愛しています! トールとでなければ誰とも結婚いたしません! 生涯ひとりを
そう宣言した。
「龍神界の
「
「許さんぞっ!」
「勝手ながら。燦紋さまにお願いがございます。この先の龍神界の未來のために。何より
「……。」
「では私はこれにて」
ミュウズは
燦紋の心は
無二の親友トールと愛するミュウズを同時に失ってしまった。その
数年が過ぎた。
トールに波動メッセージを送る。
【もう
トールとミュウズはメッセージを受け取った。燦紋の寛大なる温情に感謝して涙を流した。
そうしてふたりは燦紋のもとに出向く。トールは深く頭を下げた。
「燦紋、ありがとう。今も親友でいてくれて、ありがとう……」
トールの
ふたりの仲睦まじい姿を
……ああ、そうか。
そもそもふたりは想い合っていた。
いやはや、これはしくじった。
……ふっ、ふははははは……っ!
己のあまりの
我ながら情けなくてみっともない。器の小ささ、
久々に思い切り笑った。涙を流してひとしきり笑った。すると腹の底から『
「トール! ミュウズ! おめでとう! ふたりは『
「燦紋! ありがとう……!」
三人は手を取り合って
ほどなくして。トールとミュウズは強い絆で結ばれた夫婦になった。
翌年の神在月。満月の夜のことだった。
ミュウズがひとりの女龍神を
燦紋が
「
ミュウズが顔を上げる。そうして改まって告げる。
「この
「なんだね?」
「となりに
「……目的はなんだ?」
「率直に申し上げます。燦紋様に
そう
「うむ。ユウイ、
「はい……」
燦紋はユウイの
ユウイの
ユウイは一瞬にして心を
思わずその場で求婚した。
「
ユウイは静かにほころんだ。
「はい。
「そうかっ!」
「
「はは。どうやら
龍蛇神王と貝紫色龍神は結ばれた。まもなくして表龍王の子『
その翌年。黄金龍王と緋色龍神のもとには裏龍王の子『ノア』が誕生した。
こうして
極上なる
心底から感謝が湧出した……。
話し終えた燦紋は目を細めた。ユウイに愛情深い眼差しを向ける。ふたりは見つめ合う。
トールとミュウズも見つめ合って頷き合った。
凛花は胸がいっぱいだ。
素敵な神話だった。心が洗われるような爽やかな感動を覚えた。
雷紋とコン太がしみじみと語り出す。
「ここ
「確かにそうだねえ! それは
「そうだね。『
「イヒヒ! やっぱり
凛花はそっと
毎日をワクワクして過ごす日々こそが
未來を悲観して恐れていても仕方がない。
それよりも。希望をもって生きていくべきだ。
……もしかしたら。こんな私にもいつの日か素敵な出会いがあるのかもしれない。
凛花は
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