第十四章 ③神在月の出会い(イレーズの心情)
イレーズは不機嫌に顔をしかめていた。
目障り女(龍使い凛花)を横目で
……コン太から有能な龍使いだと聞いている。
だがしかし。人間の女など打算的で利己的で厚かましい邪念の塊だ。
もしも俺に色目を使って
…………?
おかしい。
この女のオーラは不思議だ。フィールリズムの持ち主だからか?
…………? やはりおかしい。この龍使いの女、おかしい。フィールリズムの目盛りが最大値を振り切っている。
俗世に身を置きながらなぜ
未來王から与えられるフィールリズムを最大値に保ち続けることは
コン太が『特別だ』と言っていたのはどうやらそのとおりなのかもしれない。この女が今まで会ったことのない
いつの間にか不思議な龍使い女への嫌悪感が薄らいで
コン太はイレーズの心情変化を敏感に察知した。
「あれれえ? 冷淡非道の無慈悲イレーズが珍しいねえ!
からかい口調のコン太をギロリ、
「コン太、うるさい。ウザい、黙れ」
「だってさあ、凛花のこと。あんまりそれほどぜんぜん
「無理(即答)」
「イヒヒ! イレーズゥゥッ! だけど おいらとは仲良くしておくれよ! 久々に会えた親友なんだからさあ、頭を
コン太はイレーズの身体に巻き付いて甘え始めた。
「よせ! くっつくな!
「なあ、イレーズゥー! よしよしって頭を
「ふざけるな! 調子に乗るな!」
「だってさあ、
「…………。(撫でる)」
「イヒヒ! ありがと! イレーズ、やっぱりやっぱり! 大好きだよおっ!」
「……ばか」
じゃれ合うふたりのやり取りを見ていた凛花は思わず嬉しくなった。
「コン太とイレーズさんは本当に仲良しなのね! 親友なのね! 私もノアのことが大好き! おんなじね」
そよ風が吹き抜ける。
真珠色龍神ノアがどこからともなく現れた。
「私も凛花が大好きよ!」
ノアは凛花の身体にくるりと巻きついて
「まったく相変わらずだなあ。おいらの存在を忘れないでおくれよ」
コン太は軽口をたたく。凛花が心配して問いかける。
「今日は一身上の都合って聞いていたけれど、どこか具合が悪かったの? 大丈夫?」
「ええ、体調は大丈夫よ。元気だから安心して」
「そっか。良かった」
「イヒヒ! ノアは隠れてこっそり凛花の
「護衛……?」
ノアは気まずそうに小声で答えた。
「だって、今年のカミハカリ(
「……?」
「もしも凛花に危険が及んだら。この身を
コン太はケラケラ笑う。
「まったく
「え? ばれてたの?」
「ま、相手が超天才イレーズなのだから無理もないさ。とはいえ凛花は無事だったし。結果オーライ! よかったねえ」
相変わらず優しいノアに凛花は感激した。
「ノア、私のことを心配してくれていたのね? ありがとう。それで時間差で出雲に来たのね? ごめんね」
「ううん。でもね、理由はそれだけじゃないの。今朝コン太が言っていたでしょう?
「うん」
「実は私、イレーズが苦手なのよ。だから会うのが怖くって……」
「ええっ? どうして?」
ノアはチラリ、イレーズを
「確かにイレーズは比類なきカリスマよ。さらには天人天女や
だけど感情が読めなくて怖いのよ。いつも不機嫌だし不愛想だし。気難しくて厳しくて。冷たくて寒くて! イレーズの近くにいたら氷河期の再来よ! みんな
ノアは
コン太は笑う。
「だけど決して悪い奴じゃあないよねえ? いつだって任務は
「まあ、確かに。誰よりも頼もしい存在だわ。
思わず凛花は笑い出す。
「ふふ。コン太もノアも甘えん坊の子供みたい。ふたりともイレーズさんのことを信頼していて大好きなのがわかる」
「イヒヒ、照れるなあ! 実はそうなんだよ。なんだかんだイレーズは真っ直ぐな男だしさ。おいらたちのことを
「確かにイレーズの見解に狂いはないの。悔しいけどいつだってパーフェクトなのよ。本当に申し分ないカリスマなの」
「イレーズ! あとでいっぱい遊んでおくれよ。イヒヒッ! 絶対に逃がさないからねえ!」
イレーズは
凛花は
「私は天上界の大きなはからいによって
凛花は深々と頭を下げて謝意を示した。
「へえ! 凛花にとって一期一会ってことは! 今回のこれが表龍王とイレーズに会う最初で最後の機会ってことなのかい? それじゃあ寂しいねえ?」
「うん。だけどね、もう願いは
「相変わらず欲がないねえ! 燦紋さまとイレーズとだって『友達』になれるかもしれないよ?」
「わわ! そんなのとんでもないよ。表龍王の
コン太はにんまりする。
「ふうん? へええ? そうなのかい?」
そこへ『
ふたりは
イレーズは無言のままスッと右手を高く
するとどこからともなく。
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