第十四章 ①神在月の出会い(稲佐の浜)
箱根芦ノ
所沢市緑町。
天空を駆け抜けて。するりと降り立ったのは龍使い凛花と恋人ノアが暮らしている赤煉瓦ベルだ。
まだ日の出前の早朝六時。人間に
「凛花!
寝起きに顔を洗っただけの凛花は
「出雲って、
「そうだよ! 早く
「わあっ! まだパジャマだ。五分だけ待って!」
あたふたと黒のロングワンピースに着替える。日焼け止めを顔と首に塗る。ざざっと髪を
……準備完了! 四分台前半で
「おまたせっ!」
「イヒヒ! さすが早いな。じゃあ出発するよ」
「ねえ、ノアは? めずらしくまだ寝ているけど……」
「うーん……。ノアは
「うん」
コン太が最愛の恋人に優しく声をかける。
「ノア、おいらと凛花は先に行っているからねえ! 無理して急がなくて大丈夫だからねえ! また
ノアは
「凛花、ごめんなさい。必ずあとから行くわね。コン太、悪いけどよろしくね」
「……ノア、もしかして体調悪いの? 大丈夫?」
心配する凛花の問いになぜかコン太が答える。
「ノアの心配は無用だよ!」
コン太は呂色九頭龍神の姿に
「それじゃあ、お先に行ってるねえ! しゅっぱぁーーつ!」
ふたりは
ワープして
ときは
新暦では霜月の十一月。出雲地方ではまさに今が『
夜七時。稲佐の浜では御神火が
『
そうして『
『神在祭』の神事によって。全国の
出雲に迎えられた神々たちは長屋造りの『
七日間のカミハカリ(神議)を終えると神々を見送る『
カミハカリでは、人々の明暗分かれたる『未來の
カミハカリによって人々の良縁幸縁が知らぬ間に決定されている。
今日は神在祭一日目だ。
凛花を背に乗せたままコン太が話しかける。
「おいらの親友の神霊獣使いと『
「うん! 実は以前から密かに憧れていたの。尊敬するカリスマ神霊獣使いに会えると思うと嬉しくて仕方ないんだ」
コン太は困り顔をする。
「うーーん、だけどごめんよ。あいつは極度の人間嫌いなんだ。かなり冷たくて異常に気難しい。だから仲良くなるのは
凛花は小さく
「そっか、わかった。
「それなら安心だ。じゃあ、移動するよ!」
稲佐の浜。
『稲佐の浜』は
弁天島の上空にスラリとした長身の男性が
光沢のある白銀色の
「凛花、見えるかい? あのキラッキラの男がおいらの愛称『コン太』の名付け親の神霊獣使いだよ。
凛花は無言のまま
肌は白く
身体からは
凛花は感激していた。密かに尊敬していた神霊獣使いに会えた。この目で姿を拝することができたのだ。
コン太は声を
「イレーズは異常なまでの天才でさ。
「うん」
コン太はさらに畳みかける。
「未來王の四大弟子は飛びぬけたジーニアスだ。一瞬のうちに
凛花は
「……ということで! 凛花と口を聞いてくれるかどうかはおいらにも分からない。
だけど基本的に悪い奴じゃないからさ。多少の当たりの強さとかムカつく態度をとられたとしても我慢しておくれよ。対処法としては……。ま、特に無いんだけどさ。こんなものかって慣れてしまえばオッケーさ」
凛花はかなり
「承知しました。ありがとう」
すうっと弁天島に近づく。コン太がイレーズに声をかける。
「イレーズ、久しぶりだねえ! ほら、おいらの背に乗っかっているのが『龍使い凛花』だよ。どうぞよろしくねえ!」
「はじめまして。凛花と申します」
「…………。(無言)」
露骨に無視された。ソッポを向かれた。どうやらよろしく、ではないらしい。
「おいおいおいおいっ! せめて一目だけでもこっちを向けよ!」
「…………。(無視)」
「ふーん? へえ? それじゃあ! 未來王に言いつけちゃおっかな?」
ツーンとしたカリスマ神霊獣使い『イレーズ』は眉間に深くしわを寄せた。肩をすぼめて大きなため息を
そうして
ふたりの視線が一瞬だけ重なった。
その瞬間。凛花の体内にピリリッ、電流が走り抜けた。
…………? あれ? 首を傾げる。凛花は不思議な感覚に戸惑っている様子だ。
「さあさあ! イレーズと一緒に
コン太は思わずニヤリとしていた。
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