第六章 ①龍神と龍使いの友情
都内某所・テナントオフィス。
真珠色龍神ノアは『一般財団法人・リンカ』を立ち上げて人間界で就業している。国内外に慈善活動を行う
それには理由がある。
……龍使い凛花への感謝を形にして
龍神界はその願いを思念して
財団運営は当然順調だ。代表者はその名の通り凛花である。しかし経営にはノータッチだ。役員であるノアが中心となって財団を
社員は少数精鋭だ。それは
彼ら(彼女ら)は世間からの差別の
『一般財団法人・リンカ』は財団運営の指針を明示する。
〇遺児孤児などの不遇境遇者の人生ハンデに対する資金援助活動。真心こもる寄付だからこそ若者たちの未來の支援に
〇原因不明の難病・トゥレット症候群への
〇不平等の調整資金として運用する。あらゆる場面を想定し、その必要性に応じて適正な支援をする。
切望するのは思いやりの連鎖である。
……これこそが凛花の意志である。
未來型支援団体『財団・リンカ』は的確な指針に
だからこそノアは凛花に報酬を受け取って欲しいと伝えた。しかし凛花は
しかし先日、それがばれてしまった。
赤煉瓦ベル。
ふたりは目を逸らさず向かい合う。凛花は
「あのね、ノアの気持ちは嬉しいよ? でも私ね、財団の報酬は本当にいらないの」
ノアは
「そうは言っても! 凛花、あなたは財団の指針を示した代表役員なのよ? それに今はともかく、
「ううん、ノアの気持ちはすっごく嬉しい! だけどそのお金は、本当に必要とされているファンクション(使途)でこそ価値が高まるはず。是契約者からの善意の
「だけどこれは当然の『権利』なのよ?」
「あのね私、今が幸せなんだ! ノアが居て、コン太が居て、日々が友情とか感謝であふれているの。だからもう両手がいっぱい。持ちきれない」
「だけど……!」
「もちろん、この先の未來がどうなるかなんてわからない。だけど護られ過ぎたら弱くなっちゃうよ? 私はノアに助けてもらって今を生きている。だからこそ精一杯頑張ってみたい。ノアとコン太の『親友』だって胸を張りたい。だから…………!」
ぎゅうぅっ! ノアは凛花を抱きしめた。
「わかった、わかったわ! 将来のために貯蓄をしておけば、万が一に備えておけば、凛花が安心して喜ぶはず! ……なんて、そんなふうに思ってしまったの。私の浅さが恥ずかしい……。ごめんなさい」
「ううん。ノアの気持ちだけ受け取るね! それに私ね、大学でデジタル分野を学んでいるから、将来はフリーランスで仕事して生計を立てるつもり! だから大丈夫!」
「そう、……わかったわ。それじゃあ凛花は自力で稼いでね?」
「うんっ、任せておいて! 大食いコン太の食費分だって稼いでみせるから! それに特売品の買い出しと節約は得意なの」
「もう……、凛花ったら! ……大好きよ」
「私もノアが大好き! いつも一緒に居てくれて、ありがとう」
ノアの瞳から涙がこぼれた。
……龍使い凛花が宿す『フィールリズム』とは、どこまで温かくて崇高なのだろうか。他者を優先して思い遣る真心はどれほど深くて大きいのだろうか……。
凛花の美しい心根にひれ伏す。愛おしさがいや増した。
……感服だ。
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