第9話 舞踏会

 美味しいご飯が並べられ、ワインを持つ人が戯れる。それが舞踏会だ。

 中には縁談を求めてくる人も、交渉をするものも。


 そのせいか、絡まれている人が居る。


「ニイナ殿!うちの娘はとても可愛らしいのですぞ!」

「いやいやうちの娘の方が!」

「あ…いえ。その、私は結婚する気はないんで……」

「でも、後継ぎは残すべきですわ!ですのでうちの息子と」

「はいはい!ニイナは私とワインを嗜むという先約があるので借りてきますね~」


 エルの救助によりニイナは縁談の話から逃れられ、その代わりワインを大量に飲む羽目になった。

 エルは酒豪、ニイナは嗜む程度。そんなエルにワインを永延と飲まされ少し顔が赤くなるニイナ。


「お前…まだ飲むのか」

「助けてあげたんだから感謝してよね。しかも昨日私との試合が一番楽しくなかったそうだし?その腹いせだよ」

「うぷ…もういいだろ。そろそろキツイ」

「恐怖の騎士団長が酒に弱いとはね」

「嗜むだけで強いとは限らん。ていうか何だ恐怖って…」


 エルがおいしそうにワインを飲む横で酔いつぶれワインの入ったグラスを片手に顔を机にくっ付けて倒れているニイナ。

 エルはそれを見て笑いを堪えていた。


(これお嬢様に見せたらどんな反応するかな。暇そうだし呼ぼう)


 一国の王女に対して失礼な事を考えながらエルはリリアを呼びに行く。


「お嬢様ー」

「エル!ってあれ?ニイナは?さっきまで一緒に居たのに」

「あー、ちょっとむりやり休養じゃなかった急用があるらしく。ひとまず、来てほしいんだ」

「分かりました」


 疑いながらもエルについていくリリアは到着地で驚きの場面を見る。

 それはニイナが酔いつぶれていたからだ。

 リリアはエルの方向を見ると口笛を吹きながら私は何もしてないというに顔をそらす。


「これ…エルがやったんですか?」

「いやぁ。すこーし付き合ってもらっただけなんですけどね」

「にしても、こんなに弱ってるニイナ。初めて見ました」

「お酒に弱いわけではないけど、一気に飲ませすぎたのかな…」


 自分がやりましたと言わんばかりの発言にリリアは反省の色がないことを察する。

 ニイナの顔が赤いのを見て自分の知らないニイナが見れたようで嬉しくなる。


「うぅ…ん?」

「あ、おはようございます」

「リリアお嬢様?」


 ニイナはリリアを見つけるとリリアを抱き寄せ頭を撫でる。リリアは状況が読み込まず混乱しエルはまーた始まったかという目で見る。


「いやー大きくなりましたね。リリアお嬢様」

「に、に、ニイナ?酔ってるんですか?いや酔ってるんでしょうけど一体…」

「始まったなぁ。ニイナは酔うとお母さんみたいになるんですよ」

「リリアお嬢様はいつも頑張ってますし、可愛らしいし、いやぁ。私の主は最強だと思うんだ…なぁエル」

「ソウダネ」


 エルは呆れたように答えるとリリアは顔を手で隠し悶える。

 酔ってて変なことを言うとはいえ好きな人からの可愛いなど誉め言葉はリリアの心を抉るようでリリアの顔はお酒を飲んでいるニイナより赤くなっていた。きっと体温もニイナ以上なのだろう。


 すると、ニイナは寝てしまいリリアはしゃがみ込む。


(うぅ…何なんですかあのニイナ。私の事可愛いって、頑張ってるって…駄目ですよぉぉ!また好きになるじゃないですか!)


「お嬢様。お嬢様?」


 エルはリリアに声をかけるが反応せずそのまま一次の舞踏会は終わった。




「私はどうしたら」


 ニイナは昼の一次舞踏会での出来事を鮮明に覚えていた。そのせいか、ニイナは主君に何をしたのかを覚えているせいで猛反省していた。

 そして、エルに対する怒りがまた増えたのだった。


「いつも通りにしとけばいいんじゃないんの?」

「いや、あの反応みたらどうすればいいのか分からないだろ」

「お?お嬢様の感情に気づいたかー」

「感情?」

「え?照れてたでしょ?まぁさすがにね」

「いや、あんなことされたら誰でも照れるだろう…失態だ」


(嘘だろ?マジで気づかないの?うわぁさすがにもう許容できないよ)


 エルはニイナの発言に絶望の目を向ける。すると、ニイナはまだ恨んでんのかという始末にエルはリリアを全力で全面サポートしようと決めた。


 親友でありながらもニイナの鈍感さに気づいてこれほどだったかと不安になるのとプラスしてリリアがどうしてこんな奴を今も好いてくれたのか謎に思った。


「私はお前が怖い」

「え。何?私も怖いよ」

「君と私の怖いは違うんだよ…まったくお嬢様が可哀想だ」

「はぁ…ていうか何でそんなにキレてるんだ」


 エルはむかつきを拳に込めながら壁に殴ると壁に穴が開いた。

 そしてエルは魔法で戻しすっきりしたのか上機嫌に戻る。


(壁…いや、なんか今回のエルは怒らせるとやばい気がするな…夜の舞踏会は慎重に行こう)


 ニイナはエルの拳の威力に驚きながらも夜の舞踏会の準備をする。


 夜の舞踏会は昼とは違いダンスもする。そしてハマスの王家も参加するので昼より夜の方が気合を入れる人が多いがニイナには関係ないのであった。

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