第7話 ライバル
ニイナはベッドから起き上がり騎士団の正装に着替える。
いつものように騎士団本部に行こうとするが今日が休暇だったのを思い出し、厨房に足を運ぶ。
「プリンはあるか?」
「突然来て最初の言葉がプリンですか。ありますけど」
「貰っていくぞ」
厨房のシェフにプリンをねだり、近くにあった椅子に座りプリンを頬張る。
ニイナは周りからビターなものが好きだと言われているが本当はかなりの甘党でパフェやケーキなどを求めて城下街や隣国にまで行くほどだ。
厨房にもう一人、コートを着た女性が入ってくる。
「シェーフー!ワインある?」
「ありますよ。にしても何故、団のトップ二人が厨房に来るんですか」
「休暇日だから?」
シェフが困ったように話すとエルはワインを選び、グビグビと飲む。
ニイナはワインをがぶ飲みするエルを見て何故これで酔わないのかと疑問を抱えるがいつもの事か、と思いプリン二個目を食う。
「朝からワインか」
「そっちこそ朝からデザートですかいな。団長」
「固いパンは朝に食いたくないからな」
「柔らかいパンあるでしょ食堂に」
「さあな」
「逃げたなお前!」
ニイナとリリアが口論をする中、厨房内にある報告が入る。
「ニイナ殿エル殿。至急謁見の間に」
「了解」
「はいはい」
国王の使いの者が、謁見に参加するようニイナとエルに報告すると返事を聞き去っていく。
ニイナとエルは、プリンとワインを置き歩き出す。
謁見の間に着き中に入り足を曲げ膝を地面につけ顔を下に向ける。
「面を上げよ」
「「はっ」」
「少々厄介ごとが起きてな。休暇日にすまないが城外に出てくれるか」
「問題ございませんが、一体何故」
「隣国のハマイの王家御一行が魔物に襲われているそうでな」
隣国のハマスは同盟国で王家の仲がいい。
だが、今回。訪問の予定はなかった。
「そんな予定は入ってなかったんじゃ…」
「そうだ。だが、突然の訪問で魔物に襲われている。助けに行ってくれ」
ニイナとエルは国王の言葉を聞いてお互い「御意」と言い残し馬小屋に行き相棒の馬に乗る。
ニイナは白い馬に、エルは茶色に白いアクセントが入った馬に。
馬を走らせて数分、目の前にはハマイ王国の紋章がある馬車に騎士、魔物が居た。
ニイナ達は馬から降り助太刀に入る。
「【グングニル】」
エルが手を上にあげるながらそう言うと、魔物の上から赤い槍が降り注ぐ。
下位魔物の狼の見た目をした魔物は消える。
でかいゴブリンは傷を負い馬車に斧を振りかざそうとするがニイナの華麗な迷いのない剣筋に切られ上半身と下半身が分離し倒れる。
「これで終わりか?」
「そうっぽいね」
「助かりましたぞ!」
感謝を述べる髭の生えた恰幅がいいおっさんが馬車から降りてくる。
ニイナとエルはお辞儀をし当然のことをしたまでだと伝える。
「あの…あなたがニイナ様ですか?」
「え?そうですが…」
馬車から降りてきた赤いドレスを着た金髪の少女はニイナを見て嬉しそうにする。
ニイナはすぐに分かった彼女がハマスの第二王女、アルセン・ミ・ハマスなのだと。
「すみません。妹が…ニイナ様に会いたくてたまらなかったそうです」
「お、お姉さま!」
「はぁ…私にですか。それまた何故」
「知らないの?隣国でも白馬の王子様って有名なんだよ君」
エルが何で知らないの?というような表情で説明すると何で?という表情を返すニイナ。それを見たアルセンは、はわわと声をだし感激していた。
「本当に純粋なんですね…噂通りです」
「てことはニイナ目当てで来たってことかな…」
「いや、久しぶりにベルハルトに会いに来たんだ。王家としてではなく友人としてな」
「ついでにアルベルト殿下とアミア王女殿下を会わせに来た感じでしょうか」
ハマス第一王女のアミア・ミ・ハマスはアルベルトの婚約者だ。本来なら、アミアはアルベルトの居るシャルティア王国に嫁ぎに来るのだが、ハマスには王子が居ないためアミアは王女殿下としてハマスに残り時々アルベルトに会いに来るのだ。
ニイナの問にハマス国王、ルーベン・ミ・ハマスはその通りだという様に笑う。
ここで長話をしても意味がないので急ごうとエルの言葉にニイナは馬に乗り、王家は馬車に乗り騎士はそれに続いてシャルティア王国まで進む。
王城に着くとシャルティア王家が送り迎えた。
「お待ちしておりました」
「ハハ!久しぶりだなぁ!ベルハルト」
「ここで話すのもなんだ。中に入ろう」
肩を組む二人は嬉しそうにしながら王城に入っていく。それに続いて王妃組も談話しながら嬉しそうにする。
アルベルトとアミアは照れながら手を握り入る。
ニイナが続いて入ろうとすると心配そうにリリアが話しかける。
「怪我は…してないですか?」
「こんなんで怪我してたらリリアお嬢様を守れません」
「怪我してても私が回復して無理やり戦わせるから安心してくださいお嬢様」
「エル!回復するのはいいですけど戦わせるのはやめてください!」
リリアがむすっとエルを叱るとエルは反省の色なしにニイナの肩を組む。
そんな三人に一人、少女が話しかける。
「初めまして。リリア王女。
「初めまして。私、リリア・イ・シャルティアと申します」
お互いとドレスの裾をつまみ足をクロスさせ綺麗に挨拶する。
お互いの目には恋敵という意思があったのを察したエルはニイナを急かす様に王城に入らせ、王女二人を案内する。
(こりゃあ、波乱が起こりそうだなぁ)
そんな思いを残しながらエルは胃が痛いのを我慢していた。
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