第3話

【第????戦目】

世界線Y(三松堂みまつどう ゆい 102歳)

   VS

世界線R(リアンナ・セレア・サンティアゴ 133歳)

――――――――――――――――――――




 歴史を感じさせる日本家屋。

 開け放たれた引き戸からは、手入れの行き届いた和風庭園が見渡せる。


 畳張りの和室の戸が少し開かれ、その奥から、十四、五歳ほどの容姿の少女が顔を出した。

「あ……」

 少女はふり返って、室内の様子を「来客」に伝える。

「すいません。おばあちゃん、また眠っちゃったみたいで……」

「構いません」

 その「来客」はここまで案内してくれた少女に丁寧に礼を言って、彼女を帰す。そして、畳の上に敷かれた布団に横になっている老婆……ゆいのもとにやってきた。


「探したわよ。私が転生したところと、ほとんど地球の反対側じゃないの。……まったく」

 室内で二人きりになると、その金髪碧眼の若い女性……リアンナの口調が変わる。それはまるで、古くから知っている親友と話すときのような、穏やかで親しげな話し方だ。

 一見すると、体中に無数のシワを刻み、生気の乏しい様子で眠っている結と、若さと健康に満ち溢れていてまだまだ人生これからという見た目のリアンナに、そんな深い関係性があるようには思えない。

 しかし、実際に彼女たちにはそれがあったのだ。


 見た目以上に。

 今回の人生・・・・・で重ねてきた時間以上に。

 深い深い関係性があったのだ。


「しかも……よりによって老化抑止技術の反対派だなんて……。もう少しで、私の不戦勝になってしまうところだったわ」

 その声で、結もようやく目を覚ました。

「……」

 リアンナの姿を見ただけですべてを把握した結は、穏やかな表情になる。


 リアンナの顔に、老婆のシワだらけの手が伸びていく。リアンナはその手を取って、優しく微笑む。

 そして……自分の奥歯に忍ばせたカプセルを、ゆっくりと噛み砕いた。


「次の転生では……もっと楽しい殺し合いが出来るといいわね……」

 それから彼女は結に顔を近づけ、唇を重ねた。

 リアンナの口内には、カプセルの中からあふれ出した毒液がある。その半分を自分で飲み、もう半分を、口移しで結の体に流し込む。

 そして、まるで添い寝でもするように、結の眠る布団の上に倒れた。



 しばらくして、先程の少女が様子を見に戻ってくる。

「おばあちゃん、まだしばらくは起きないでしょうし……その間、退屈しのぎに私とお話しません? 私、お姉さんのこといろいろ聞きたいなー……って⁉ え、え⁉ ちょっ、ちょっとお姉さん、何してるんですか⁉ え⁉ 二人とも息してな……ウ、ウソでしょっ⁉ きゅ、救急車ー! だ、誰か救急車ーっ!」





 それからも彼女たちは、何度も何度も転生を繰り返し、別の場所で別人になって、お互いに殺し合った。

 だが、不思議なことに・・・・・・・……その殺し合いは毎回必ず引き分けで終わり、勝敗は次の転生先へと持ち越しとなるのだった。

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キラ × キラ転生ランデヴー 紙月三角 @kamitsuki_san

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