第6話 アピル
俺はまだドニィーシャとしか会っていない。このまま部屋にいるのも退屈なので、彼女に外に出たいと申し出るとお金を渡してくれた。
銀貨と銅貨であった、小さい銅貨が1セント、大きい銅貨が50セント、小さい銀貨が1ドル、大きい銀貨が50ドルだつた。
それより大きい通貨は金貨になるそうだ、紙幣はないようだ。
ドニィーシャは建物の出入り口まで案内してくれたが、帰りは案内なしでは部屋に戻れそうにない。
町に出ると車が走っていなかった、町の道は歩行者専用道路である、だが道幅がある幅50メートルくらいはありそうだ。
歩行者だけが通るにしては道幅がありすぎる。
通り沿いは個人商店が並んでおり、賑わっていた、また、商品も豊富にあるようであった。
町のどこへ行っても同じような感じである、町が平和で豊かな証拠だ
だが、ショッピングモールのような大型店舗はなかった。
それに町には教会や仏閣などの宗教的なものがなかった。
この国がどんな神を信仰しているのかが気になる。それによって俺が注意することが変わってくる。
そして、昼頃になると町は静かになった。俺は、警戒したが、武器になるようなものは持っていない、気配を探ると人々がどこかへ行ったわけではない。
しばらくすると、楽器を持った一団が道の真ん中で演奏を始める。靴屋だった店の前で肉の串焼きの屋台ができていた。
俺は腹ごなしのついでに屋台のおやじに聞く
「ここって靴屋だったよな。」「そうだよ、昼からは趣味で屋台をやっているのさ。」
「え、午前中しか働かないのか。」「さては、にいちゃん、来たばかりだな。」
「ああ、そうだ。」「ここでは大抵、午前中に働いて、午後はやりたいことをして過ごす、例外もあるがな。」
「ありがとう、勉強になった。」「これからもひいきにしてくれよ。」
俺は屋敷に帰ることにする、確かめたいことが山ほどできたからだ。
屋敷に戻ると誰もいない不用心だ、俺は正面の階段に本を読んでいる少女を見つける
「お嬢ちゃん、家の人どこかな?」「お嬢ちゃんだと私は誰よりも年上だぞ、言葉を選べ小僧!」
どうも不評を買ったようだ。
「どうしたのアピル。」
振り向くと金髪の女性が立っている。いつからいた?全く気配は感じなかった、俺は腹の底を冷たい物が流れる感じがした
「あなたはドニィーシャのお客さんね、どうしたのですか?」「あのー、部屋に戻れなくなりまして。」
「なら、最初に言ってくだされば、良かったのに。」「いえ、この子以外誰もいなかったもので。」
「まだ、分からんのか、小僧。」
アピルと呼ばれた少女が睨む
「私、最初からいましたよ。」「すみません、気づきませんで。」
ここは、化け物屋敷か
「では、私が案内しますね。」
俺は無事部屋に戻ることができた。
部屋に戻って来るとドニィーシャが部屋に入って来て
「町はどうでしたか?」「豊かで平和だった、でも運搬の車両を見かけなかった。」
「それは町の下の階層に物を流通させる階層があるんです、明日見学しましょうか。」「宗教的な建造物がなかったが、ここでは信仰を禁止しているの?」
「いいえ、信仰は禁止していません、ただ、宗教的な対立などは重罪となります。」「建造物の建築も禁止されています、もともと小さな国ですのでそのような土地はありません。」
「他には質問ありませんか。」
いろいろ質問があったがアピルと金髪女性のせいで頭から飛んでしまっている
「アピルと言う少女と金髪の女性に会ったんだが・・・」「アピル・ラッサルね、彼女は5000年位生きていて、この国では一番の長寿よ。」
「そして、知識量も一番だわ、本を読むだけですべて暗記してしまうの、アピル様と呼ぶといいわ。」「金髪の女性はサイーシヤ・プラトノーフね、魔術師で、魔女殺しの異名を持っているわ。」
「大抵、アピル様と一緒に行動しているわ。」「その魔術師の気配に全く気がつかなかったんだが。」
「それは、あなたが弱過ぎるからよ。」「これでも何度も死線を超えていているよ。」
「それは、あなたの世界の話、いずれ、分かりますわ。」
どうやらフレイムランドは化け物の巣窟らしい、この国では俺の技術は弱すぎて役に立たないらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます