第15話 ポスター作成

 次の日滝本君にあうとだいたいのポスターのラフは出来ていた。

「わあーもう出来てるの!」

 私がぼさぼさしてるうちに滝本君はせっせと励んでおおむねイメージは出来上がっていた。

「ねえこのイメージどうやって考えたの?」

「そりゃあ曲聞いたり軽音部に足運んだりしたよ」

 さっすが研究派。

「そっか私一緒の家に住んでるのに曲聞いたこと無くて、一度また取材に行かないとって思ってたんだ」

「いいよ、今回はこんなイメージで全体まとめて、少しコピーも考えたんだ」

「えー滝本君が、私のやることなくなっちゃうよ」

 そしたら滝本君は余裕で笑って、

「従兄弟同志だと冷静に考えるのやりにくいだろうと思うよ。僕の組にも軽音部の奴いるし色々話しを聞いているうちにこんなイメージになったんだけど、どう?」

「良いと思う、神秘的な感じで、ああ、ロックってイメージ」

「なんだよそれ、先輩が新しいコピー機使いたがってたけど、やっぱりこれはシルクの方がいいかなあって思ってる。ばちっと色が出ると台無しって気がするんだ。ちょっともやがかかった感じにしたいな」

 滝本君は本当にこういうことが好きそうで細かいことも苦にせずにひとつひとつ作っていく。才能もあるけど仕事人という感じで今回はすっかりお任せした方がよさそうだった。

 この頃滝本君のポスター人気だからな……力も入れたくなるよな。

「あの、私も一枚もらっていい?母さん達に見せたいの」

「ああ、余分に作っておくよ」

「サンキュー」

 私はすっかり滝本君におんぶに抱っこで、浮き浮きしながら文芸部に帰ってきた。

「あ、お帰り。忙しそうね」

「そうでもないんです。この頃滝本君張り切ってて、私が知らないうちにどんどん出来上がってるんですごいんですよ」

 幸乃先輩はにっこり笑うともっていた本のページをめくって私に渡した。

「これ見て」

「なんですか?交流誌って」

 表紙を返すと本は都内の高校の交流誌。中に校内ポスターのコンクールの記事が載っていた。校内ポスターのコンクール?

「美術部と相談して出してみないかなあと思ったの。色々作ったポスターまとめて出してみたらうちの学校の様子も他校に知らせる事が出来ていいんじゃないかと思って」

「へえこういうコンクールがあるんですか。知らなかったなあ~」

 交流誌っていう本があるのも知らなかったけど……

「私、沢木先輩の所へ行って来ます」

 私はまた急いで美術部に引き返すために廊下へ出た。

「ひみこちゃん張りきってるね」

「ああ、我が部の外交部員だからね」

「この頃文芸部って人気あるのよ。色々聞かれたり、楽しみにしてますとか言われたりして」

「部の中でも色々な部門に携われるように形にしていくといいね。これからも続けて行けるように」

「うん、そこは私達がやらないとね。この頃喧嘩しないで考えられるようになったし」

「幸乃のやりたいことが僕にはよくわからなくて理解してやれなかったけど、今はなんとなくわかるから一緒にやれる」

「自分のやりたいことがなんなのか自分でもわからなかったの。だから宗司にわからなかったのは当然なのよ。ずっと……嫌な思いさせて来たよね」

「まあね。幸乃の剣幕は半端じゃないから…ま、それはそれで楽しかったけどね」

「いつも感謝してました。……心が広いんだよね宗司は」

 部室の中から先輩達の話声が聞こえる。先輩達はこの頃とげとげしさが無くなって仲が良かった。


 剣士のコンサートに私がドキドキすることないんだけど、どうもこの頃七月七日が近づくにしたがって気持ちが高ぶっている。剣士の曲は優しくて透き通る感じだとかで前評判も良かった。そりゃあ降るような星空と紺碧の海に囲まれてサルのように育った剣士の目には、私達都会人には見えない物が無限に写っている。今ひとつ理解できない分そんな気がした。

 あいにく私は機会が無くて剣士の曲を聴くことが無かったけど……

 コンサート前になると止まり込みで豊の家に行ったりする夜も多くなって説明はしてみても情報に疎い父さんが、またご機嫌斜めだった。

 滝本君の新しいポスターもまた評判で、ファンの子達に頼まれて多めに作った枚数もあっと言う間に出払ってしまった。

 これは絶対さい先良い。最高潮の盛り上がり、剣士のコンサートも大成功だって私は心の中で飛び跳ねていた。

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