十二月・或る日の夜
着信は藤原さんからだった。
『髪を染めてもらえませんか?」
「いいけど、今日?」
『今から1時間後って大丈夫ですか?」
「いいよ、1時間後ね。」
隣にいる友人に冷やかされながら電話を切る。「もうちょっと話そうぜ」悪意を持った表情で友人が言う。丁重に断ると、「多分ラブホだろ、気をつけろよ」と友人、別に気を付けることなんて何もない。
友人と別れ彼女のもとへ向かう。指定されたのは友人の予想通りラブホテルだった、約束をしてしまった以上後には引けない。彼女と合流し一番安い部屋に入る。
「誘ってるわけじゃないです」
「わかってるよ」
彼女は何色かカラー剤を持ってきていた。以前まで入れていた色が完全に抜けて金髪になっていたのでどんな色でも入るのだろう。
「何色が好きですか?」
「赤かな」
そんな会話をしながら彼女の髪を染める。他人の髪はおろか自分の髪ですらセルフで染めたことはない。不慣れな手つきでなんとか染め終わる。
思ったより時間がかかってしまったようで時計の針は12時を回り、日付が変わっていた。
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