十二月・或る日の日中

 大学の卒業式は3月だが卒業論文の提出は1月中であることが多い。下宿をしている学生は徐々に下宿先を引き払い実家に帰る準備をする。僕の友人もその一人、『引っ越しを手伝ってくれ』そんな内容のメッセージが来た。お土産で日本酒があるらしい。断る理由もないので友人の住む街へ電車で向かう。駅にはレンタカーを借りた友人が迎えに来ていた。5ナンバーだが7人乗りのミニバンでそれなりに荷物の乗りそうな車だ。そのまま友人の住むアパートに向かった。

 作業を始める。ミニバンを用意しただけあって今日運びだすものは大物が多い。テレビ台や夏物が入った箪笥、6畳の部屋には不釣り合いな大きめのクッション、想像以上の肉体労働だ。作業がひと段落したところで、「1本くれよ」友人は喫煙者で僕はもらい煙草専門だ、「いい加減自分で買えよ」小言を言われながらベランダに出る。「最近どうよ?女の子とか」「バイト先に新人が入った、その娘とは仲良くしてるよ。」友人は驚いた顔をして、「もう恋はしないんじゃないのか?」いたずらに笑う。「恋とは違うよ、情けない話だけど怖い」「怖くなければ好きってことじゃん」揚げ足を取るのが好きなやつだ。気づけば煙草は短くなっていた。「残り、さっさと終わらせるぞ。」これは恋なのだろうか。

 一通り作業を終え友人の運転で地元に戻ってきた。日が傾いたコンビニで友人と煙草を吹かす。近況報告や思い出話にも底が尽き、もう一本吸って帰ろうかというところで僕のスマホに着信があった。

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