夢・八月下旬
二番手の男に成り下がったがいつもと変わらず”元”恋人の住むアパートに向かっていた。自転車を駐輪場に止め2階にある部屋へ向かう。持っていた合鍵で玄関を開けるとそこには初めて目にする大きめのスニーカー、僕があまり好まないブランド、間違いなく僕のものではない。一応アポは取ってあったはずなのだが、嫌な予感がしてベッドのほうを見ると足が4本、男女2本ずつ、2人も僕に気づいたらしい、薄手のブランケットをめくり体が起き上がる。二人が着ていたのは僕とお揃いで買ったはずのスウェット。男は何も言わずに着替える、僕とは違う顔、僕とは違う体格、僕とは違う系統の服、きっと中身も僕とは違う。すべてを否定された気分だ。男は気まずそうに部屋を後にする。声を荒げることも、殴ることもできなかった。もう既に恋人ではないのだからそれをする権利なんて持ち合わせてはいないのだが。
”元”恋人と2人きりになる。「何もしてないから」状況的に無理がある。「あれが好きになった人?」これで答えがイエスなら何の問題もない。恋が叶ったのだと祝福するべきだ。「違う、バイトの先輩」黒い感情が沸き上がる。「嘘をついたんだ、戻ってくるって。」なんて女々しいセリフだ、「あんたが勝手に信じたんでしょ?私は最初から嘘つきだよ。」全くもってその通りだ。僕が勝手に信じて傷ついただけ。どういう女か目を背けて、見抜こうとしなかっただけ。そこからの会話は覚えていない。きっと、論理的な説明を求め続けていたのだろう。この手の話に論理なんて通用しないことは分かっていたはずなのに。
いっそ嬌声を聞いていたほうがよかったかもしれない。そのほうが余計な口をきかずに済んだはずだ。なんにせよ、僕の自己肯定感を破壊するには十分すぎた。僕は合鍵を女に返し部屋を後にした。
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