第6話

 君と僕は幼馴染で家も近く、家族ぐるみでの付き合いもあった。そのためか、幼稚園も小学校も必ず一緒に通っていた。そんな僕らが離れ離れになったのは、中学生になってからだ。初めの頃は違うクラスになっても教科書の貸し借りはもちろんのこと、廊下ですれ違ったら会話したり、たまに時間が合えば一緒に帰ったりしていた。だけど、お互いの部活や友人との付き合いで、いつの間にか話す機会も減ってしまい、入学してから三ヶ月で一切の会話がなくなった。すれ違っても挨拶の一つもせずお互いが無視し合う関係が続いた。この時の僕は、はっきり言って君の存在なんてどうでもよかった。

 そんな僕が君を久しぶりに見たのは、これまた久しぶりの大型台風が接近していた時のことだ。間抜けな僕は、こんな日に限って雨具を一切持ってこないなんて失態をしてしまった。この嵐はいつになれば去るのか、分からなかったけど僕は少しでも止むのを学校で待った。

 いつしか暇になった僕は、小学生以来だけど、一人で学校を探検した。外の空は灰色の分厚い雲に覆われていて、切かけの階段の蛍光灯が妙な雰囲気を醸し出していた。特に回るコースは決めていなかったけど、この雰囲気の中学校を探検するなら、学校の七不思議を調べないわけにはいかないと、まずは理科室に向かった。が、当然のように鍵がされていた。続いて音楽室に向かったがここも予想通り鍵がかかって中には入れなかった。音楽室に寄ったついでにトイレの前をゆっくり歩いて通った。女子トイレ言えば花子さんが有名だけど、僕は男子だ。中にはいって扉をノックするなんてことはできない。諦めて階段を降りるが、この学校の階段の踊り場には鏡はない。代わりによく分からない小さな扉がついている。使い方は知らない。そしてこの学校にはかの有名な二宮金次郎の石像もない。念の為、何度も階段を登り降りしてみるが階数が増えることもなかった。最後に絶対に無理だと諦めている校長室に向かった。が、予想通り中に入ることはできなかった。というか電気がついてっ誰かの話し声がしていた。これにて僕の学校七不思議探検は終わりを告げた。探検も終わって待つのに飽きた僕は諦めてびしょ濡れになって帰ろうと決意した。靴箱に向かうために歩いていた廊下で、雨の音に紛れて微かに女の人の声が聞こえたのだ。怖いと分かっていたけど、何故かその声を確認しないではおけない僕の好奇心に敗れて雨音が響き渡る廊下で耳を澄ませた。すると、その声はどうやら靴箱の方でしていることが分かった。元々の目的も靴箱だったからと、恐る恐るではあるけど声のする方に行くと、そこには、泣きながら蹲っている女子がいた。何か面倒ごとに巻き込まれまいと、気付かないふりいや、無視して帰ろうとすると、その子に呼び止められたのだ。しかも下の名前で。

 

「健……健なの?」

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