第5話
大慌てで学校のへ行く支度をし、朝食はリビングの机の上にあったあんぱんとクリームパンを鞄に入れて学校に着くまでに食べることにした。
「ごめん、寝坊した……」
言葉通り君は玄関前で待ってくれていた。
「やっぱり寝ていたんだね。昨日、スタンプ送ったきり何も帰ってこないから、そうじゃないのかなって思っていたんだよね」
「本当にごめん。遅刻しないうちに学校行こ!」
今日はいつもより早いペースで自転車を漕いだ。いつもより早いペースで自転車を漕いだ僕らは、靴箱で立ち止まった。
「そういえば、健。今日いつもより顔赤くない?」
「そんなことはないと思うよ。自転車漕いだ後だし体温が上がっているだけだよ」
原因の一つに君が隣にいるからだとは言えなかった。
そんな君は、僕の密接距離に軽々と踏み込んで、手を伸ばしぼくの額に優しく手を当てた。
「う〜ん……。確かに私の額と大して変わらないかも」
僕は慌てて君から距離を置いた。離れた距離は社会距離くらい。メートルで表すなら一メートル五十センチくらい。
「ちょ! ちょっと! 何してんの?」
鏡など見なくても自分の顔が赤くなっているのを感じた。
「何って? 健が熱出てないか確かめただけじゃん! 健、本当に熱ない? 昨日も途中で寝てしまうし、朝は寝坊してしまうから心配なの」
君は本当に人前、公衆の面前というものを気にしない。僕にとっては嬉しいサービスだけど、それで困るのは僕じゃなくて君だ。
「心配ありがとう。でも、本当に大丈夫だから。それよりも、人気のないところでそういうことをするのはいいけど、人前ではちょっと……」
「何で?」
「何で? って。それはほら、その……側から見れば僕らが付き合っているように見えるから、そういうイメージを持たれたら青葉の告白も失敗するかもしれないだろ?」
自分でそう言っておきながら、胸が締め付けられるように痛い。
「私は別に気にしないよ。だって、健は幼馴染だから。周りからなんて言われようと幼馴染だから」
君までも僕を攻撃してくるのか。自分で勝手に傷をつけるのは浅く回復も早いけど、君に言われるのは心に深く傷ができそうだ。
「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、そのせいで君に彼氏できなかったら申し訳ないから……」
「は! ご、ごめんなさい……。健、嫌だったんだよね……。気が付かなくてごめんなさい……」
「嫌ではないから大丈夫だよ。嫌だったらとっくに登下校を一緒にしてないよ」
君は蕾が花咲かせた時のように一気に明るくなった。
「ありがとう、健」
「教室行こっか」
靴箱で長話をしていた僕らは、いつもよりはるか遅くに教室に着いた。
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