第4話

 君の目的はそれか。くだらないコメント広告のように言ったところで誰もそんなのには引っかからない。引っかかるわけない。

 

「それは言えない。さっきも言ったけど、僕にちゃんと覚悟できたらその時は言うから」

 

「分かった。健がその気になるまで待ってる。だから、その時は一番に教えてね」

 

「もちろんだよ」

 

 僕だって好きでケチを演じているわけではない。本当は今すぐにでも言いたい。好きな人は君だと言ってしまいたい。だけど、それを言うのは怖い。君の隣に立てなくなるのが怖い。君と話せなくなるのが怖い。君の顔を見れなくなるのが怖い。僕の視界から君と言う存在が消えてなくなってしまうのが怖い。だから、今は何もしない。勇気がないだけだ。と言われてしまえばそうだろうけど、告白という一大イベントをそう簡単に決行することはできない。それに、一歩踏み出す先は崖だと分かっていながら歩みを進めるなんてまね僕にはできない。

 君との帰り道はもうそろそろ終わりを告げる。ここの交差点を左に行けば君の家。右に曲がれば僕の家。

 

「じゃあ、健。また明日ね。明日も一緒に学校行こうね! じゃあね!」

 

「うん、また明日……」

 

 こうして僕らはそれぞれの道へと進んだ。と言っても、数十メートルの距離。それでも、君との別れは寂しいものだ。何ならこれからもずっと一緒にいたいと思っているが、それは僕だけの思考なのだ。

 僕は君が家の中に入るまでを建物の影に隠れて見守った。と言うのは単なる建前。本当は一分一秒でもいいから君の姿を目に焼き付けたかったからだ。まあ、君の姿ははっきりとではなくて街頭の明かりにかろうじて照らされている程度だったけど。

 僕が家に帰ると、君からメッセージが届いていた。

 

(今日はありがとう!)

(おかげでスッキリしたよ)

(健がもし振られた時は本当に私を頼ってね)

(どんな愚痴だって聞くからね!)

 

 本当に何も知らない人はお気楽でいいよ。僕は君が好きなのに愚痴も何にもないだろ。

 そんなことを思いながらも、僕は嘘をつく。君をこれ以上傷つけないためにも。傷を負うのは僕だけでいい。


(ありがとう)

(その時はよろしくね)

 

 君からの返信は早い。

 

(任せて!)

(今度は私がジュースを奢ってあげるからね!)

 

 なんて返信するべきなのか悩んだ僕は結局スタンプに逃げた。犬のイラストにありがとうと文字が書かれたスタンプに。

 朝、僕はいつものようにスマホのアラーム機能ではなくて、母親に起こされた。アラームはかけていたけど、今日は聞こえなかった。

 

(ごめん。寝坊したから遅れる)

 

 取り敢えず君に寝坊の報告をした。相変わらず君の返信は早かった。

 

(大丈夫だよ)

(まだ遅刻しそうな時間じゃないし)

(玄関前で待ってるよ!)

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