海に行った話。

海に行った話。

ども。こういう場所に書き込むのって初めてなんで、駄文＆まとまりがないのは許してください。

この前ちょっと、いや結構怖い体験をしたんで、起こったことをできるだけ正確に書いていこうと思う。嘘松だって思う人もいるかもしれないけど、それでもいいからとりあえず誰かに聞いて欲しい。なんか自分の中にだけ留めておくと、それがほんとに現実で起こったことなのか、確証が持てなくなるから。

今大学生の俺は、友人と和歌山県に海水浴に行ったんだ。特定が怖いから具体的な場所とか時間は言わないが、まあお盆あたりだと言っておく。

一緒に居た友人を、仮に友人KとSと呼ぼう。失恋して落ち込んでたSを慰めようってんで、3人でどっか旅行に行くことを考えてたんだが、そこでKが和歌山のとあるビーチが綺麗で良いって提案してきて、俺たちはそこに行くことになったんだ。

朝9時くらいに現地に着いたが、人の多さに驚いた。俺たちはバカな男子大学生らしく、可愛い子居ないかなーとかワンチャン狙ったりして、普通に海水浴を楽しんでた。

しばらく遊んでるうちに、ちょっと奇妙なことが起こった。Sがいなくなったんだ。いや、もちろん、こんだけ人のいる中だし、仲間とはぐれるなんてことは珍しくもなんともないが、しっかり者のSが迷子になるってのが珍しくてちょっと驚いた。少し探したらビーチの端っこにある岩の上でボーッと海を眺めてるSを見つけたので、とりあえずその時は一件落着したわけだが。

俺はこの時、変な噂？みたいなのを思い出したんだ。それが、「お盆に海に行くと幽霊に連れていかれる」みたいなやつ。もちろん、俺はそういう迷信みたいなのは信じちゃいない。俺はリアリストで、ここに書き込む前までは、こんな心霊体験投稿サイトなんて全部嘘ばかりでバカバカしいもんだって、ずっと思ってるような人間だった。だから、そんな噂は、クラゲが出る危険性を示すために作り出された創作話にすぎない。

でも、なんとなく不安感が拭いきれなかった。海を眺めてるSの目が、なんか異様に怖かったんだ。俺が声をかけると、Sはすぐ振り向いて「ごめんごめん、なんかぼーっとしてたわ。まだ失恋のショックあるかもしれん」っていつものように冗談交じりに返ってきたので安心したんだが……。

Kが「こんなとこ危ないから早く戻ろう」って言って、俺たち3人は人の多い場所まで戻ろうとした。そして、その去り際に、俺はやってしまった。Sと同じ場所から海を見てしまったんだ。

俺は一瞬、思考が止まったかのように感じた。どこまでも「青」が続く、その海の広さと深さに、俺はどうしようもなく打ちのめされてしまった。たった今まで海で遊んでいたのに、まるで生まれて初めて「海」というものを見たかのように感動していた。

俺が海を眺めていると、Sが「何してんの、早く行くよ」と俺の肩を叩いてくれて、俺は正気に戻った。とりあえずその場を後にして、何事も無かったかのように再び海水浴を楽しもうとしていたのだが。

海の家で昼食をとった後、暑くなってきたので、海水浴を切り上げてどこか屋内で遊べるところに行こうってなった。俺たちは水着から着替えて、さあどこへ行こうかとKがスマホを取り出した時、Sが「最後にもうちょっとだけ海見てきていい？二人は先に行ってて」と言って一人でまた海に行ってしまった。

「仕方ない、ここで待ってようか」とKが俺に言ったが、俺はSをほっとけなかった。最初に俺たちとはぐれた時のSを思い出したからだ。嫌な想像を振り払いながら、俺はSを追いかけた。Sは、人が多く集まってる砂浜では無く、そこから離れた岩ばかりの場所へ向かっていった。俺たち以外の人はいなかった。

俺はSを追いかけたが、そこに着いた時にはSを見失っていた。俺の目の前に、またあの海が広がっていた。俺はSを探すという当初の目的を忘れ、心地良い波音に耳をすまし、波風に身を委ねていた。遠くから、楽しげな人々の声が聞こえてくる。当然海水浴客の声なのだが、何故か俺を呼んでいるかのように感じた。

「幽霊に連れていかれる」この噂をまた思い出した。まさか俺は、幽霊に海に呼ばれていたのでは？突拍子もない想像が脳裏をよぎった。実際、たった今俺は当初の目的も忘れてずっと海を見てしまっている訳だし、何か怖いことがが起こってるんじゃないかと不安になってくる。

やっとこさ立ち上がって、Sの捜索を再開しようと思い立ったとき、Kの俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

「おーい、Sはどこ行ったんだ？」Kが俺の元に走ってきてそう聞いた。

「いや、どこにもいないよ」俺は首を振って答えた。

「そっか、もうかえったんだな」そう言ったKの目が、Sが海を眺めていた時の目と全く同じようになっていたのに、俺はこの時気づいた。

「帰ったって……俺たちを置いてあいつが勝手に家に帰るわけねえだろ」

「そうじゃない。◯◯(俺の名前)はまだ気づいていないんだな、僕たちのすべきことに」

そう言って、Kは俺の肩を強く押して海に突き落とした。

俺の体は冷たい海に沈んでいった。Kが俺を突き落としたときなにか呟いていた気がするが、良く思い出せない。

もちろん、俺は今ここでこの文章を書いているわけだから死んではいない。実は死んでてこれは別の人が書いてましたとかいうオチじゃないから安心してくれ。とにかく俺は海に落とされた。それからの記憶は曖昧で、今でもあれは夢だったんじゃないかとすら思ってる。

海の中ってのは、おとぎ話に出てくるような幻想的な世界では無い。真っ暗闇に、微かに太陽光が入ってきて周りのものを照らしている。俺の周りにいるそれは、大量のクラゲだった。半透明な体で、俺の周りをぷかぷかと漂っていた。

そしてまた、あの楽しげな人々の声が聞こえてきた。俺が沈んでいくに従って大きな声になり、だんだんなんて言ってるかが分かってきた。ただひたすら「かえろう」「かえろう」って言ってるんだ。

今考えたらほんとちびりそうになるくらい怖いんだけど、その時の俺はやっぱおかしかった。リトル・マーメイドみたいな世界が広がってる訳でもなく、暗闇が広がる海の中で、俺は恐怖どころか安心感すら覚えていた。

今振り返ってみてわかる。「幽霊に連れていかれる」なんて噂があるが、海にいるのは幽霊なんてちんけなものじゃない。なんかもっと、俺たち人間には到底表現することなどできない、恐ろしくも美しいもの。俺は海で「それ」を見たような気がするのだが、全く覚えていない。ただ、冷たくて暗い海の中をゆっくりと沈んでいく感覚だけは、俺の記憶にはっきりと残っている。

次に目が覚めた時には、俺は病院のベッドの上にいた。浜に打ち上げられて気を失っているところを発見されたらしい。俺の隣のベッドにはSも横たわっている。俺と一緒に救助されたのだ。でもKはいなかった。後で聞いた話だが、あの海水浴場から少し離れた釣り場で男性の遺体が発見されたらしい。詳しい話はあまり聞けていないが、十中八九Kだろう。

Sとは、できるだけあの日のことは話さないようにした。Sも、あの日の記憶が曖昧になっているようだった。俺たちはなるべく早く日常に戻ろうとした。海水浴のことも、Kのことも忘れたフリをして、今も夏休みをダラダラ過ごしている。

それでもやっぱりあの不可解な出来事が色々と気になって、ちょっと調べてみたりもした。そしたら、なんとなく事件の内容が掴めてきたかもしれない。

海は俺たちの故郷なんだ。地球最初の生命は海で生まれたと言われている。海は俺たちが帰る場所だったんだ。無情にも故郷を捨てて陸で生活し始めた俺たちを、海はずっと待っていた。

Kは、俺たちと共に海に帰ろうとしたのだろうか。思えば最初に海に行こうと誘ったのもKだった。あの時からもう既に、彼は海に囚われてしまっていたのだろうか。

海で俺たちを待っていたのは、幽霊か、怪物か、人魚か、神様か。あれこれ考えても、一般人の俺には何も分からない。だから、ここで書くのを最後に、もうこのことについては考えないように努めようと思っている。でもそう上手くはいかない。気を抜くと、未だに海が見たくて仕方なくなることがある。俺ももうとっくに、海に魅入られてしまってるんだ。

なにはともあれ、俺はこうして助かっている。海から生まれたものは海に還るべきなんだろうが、俺にはどうやら少し早かったようだ。サブスクで観たい映画がまだまだ沢山あるし。

まあこんな話だ。所々まとまりがなかったり曖昧な感じになってるところもあるが、俺のぼんやりとした記憶を頼りに書いてるから勘弁して欲しい。とにかく、海には気をつけた方がいいぞ。俺からのアドバイスだ。

さて、ここまで読んでくれてありがとう。俺は寿司でも食べてくることにするよ。

コメント

1 興味深いお話をありがとうございました！

2 なんだか不気味な話だった

3 作り話だろどうせ

6 >>3 荒らし乙

8 >>3 いやこれ割と事実かもしれんぞ。ちょうどお盆前くらいに和歌山のビーチで若い男性の遺体が発見されたってニュースやってたし 。

10 >>8 それまじ？怖すぎる

13 >>8 それは違うんじゃね？だって投稿主 が海水浴行ったのはお盆のどっかだし、それだと海水浴行く前にKが◯んでたことにならないか？

15 >>13 が本当だとしたら投稿主さんと一緒に行動してたKは何者

4 海行くとなんか言葉にできない安心感があるんだよなあ。俺も魅入られてるかもしれんw

5 面白かった！海に落ちたはずの投稿主さんが助かったのはどうしてだろ。もちろん助かってて良かったけど。

7 >>5 この文章見る感じだとだいぶ深い所まで沈んだっぽいし。てかそもそもビーチの近くの海ってそんなに深いのか？

9 >>7 投稿主はどこに行きかけたんだろうな

11 海行くの怖くなったわ

12 みんなのコメントでの考察がもっと怖い

14 投稿主はどうしてまだ下宿先にいるの？せっかくの夏休みなんだし、帰った方がいいよ。実家に帰ろう。家に帰ろう。

海にかえろう