第29話 火の記憶②
コア最上階、神明会議場。円卓におわしましますは、建国の六華がご祭神六つ柱。さらに獣の国が一柱、ランドルファン様もいらっしゃられる。
大国を象徴されるその神々の中に1人、これまたこの世の者とは思えぬ姿、
”驚くほど白い肌と髪を持った”コアの
「定例の会議を始めたい…ところですが、鬼の国の
ということで相違ありませんか?子砂之進様」
かように尋ねられたるは
「知らねえよ オレがいちいち確認取ってると思うか、あ?
だいたいよぉ、あいつが来なくても会は成り立つだろうが」
「しかし、わざわざ特例が認められているというのに…不義理ではありませんか」
火の国が一柱、クメプトゥ様はかように嘆かれておられる。
それをなだめられるように水の国ルオフィア様は、
「殊に角が立つような物言いをしなくてもよろしいですわ。諫守ちゃんも”代替わり”
のことで大変苦労されたと聞きますし」
「どうせ会の話はあとで共有されるんだしよ いいんじゃねえか?」
土の国が一柱、梦土丹様もこうおっしゃられる。
「しかし姉う…ルオフィア、さん!戸部君の代替わりの件であれば、すでに
終わっているはずでしょう。理由も告げずに欠席とは…いかなる事情と言えど、
許されざることであります。それに私は…我々がこうして顔を合わせることも、
均衡を維持するうえで重要であると心に留めてほしいのであります」
「マジメ腐りやがって…モテねぇぞ」
「梦くん…それをあなたが言いますか…」
「しかし確かに理由もなしにとは感心しませんね まだ連絡はつかないのですか?」
神子に尋ねられたのはランドルファン様だ。先代から引き継がれたその依代は、
まさしく人とドラゴンより生まれし祝福そのものである。
「残念ながら…… !しばし
今し方連絡がありまして、欠席とのことです」
「まあ!それは残念ですわね~ぇ、
木の国が一柱、マルギイェーロ様はさらっとおっしゃられ、
さして気にされていないようである。
「あなたもそろそろ代替わりの頃合いでは?言葉もカビが生えて見えますよ」
「はッ トカゲ風情が妾に物申すか!いまだ貴様の業の深さを忘れたか?」
「すまないが、それ以上の
わたしをッ!取り巻く輝きがッ!アァ‼濁ってしまうよ」
光の国が一柱、ルミナイシス様は謎のポーズを取られつつも仲裁してくださった。
「ルミナ兄様はこの娘の肩を持つつもりですの⁉」
「そうじゃないさ ただ、君が彼女の言葉を真に受けるはずないよね?
だって、君はこんなに美しいじゃないか」
「兄様♡」
ここぞと言わんばかりに神子が咳ばらいをし、
「…では、定例会を始めたいと思います」
病院には火災の被害を受けた人々が流れ込んで来ていたが、
公園から少し離れた所にあることもあり、すぐに受付を終えることができた。
椅子で診察の番が来るのを待っていると、カナメ宛に通信が入ったらしく、
手を通して会話をし出した。
「…カナメ支部長、緊急につき召集命令である 至急、5号支部に来られよ」
「…はい、了解しております ですが、子供たちが…」
「被害を受けたのか?」
「…カイナは大丈夫ですが、ユメリアが 先生に診てもらうまでは」
「泡魔法を使える者が必要だ 現状、最も頼れる戦力が君だ」
「⁉それは…“加茂”をするということですか⁈」
「そうだ 昔の隊員も、集まってる…待っているぞ」
『ユメリア・ルークさん』
音声で呼び出された。院内はさっきにも増して慌ただしく医師が動いている。
彼らを避けながらも診察室に辿り着いた。診察台にユメリアを寝かせ、
医師の診断を待つ。診察は思ったよりすぐに終わり、
ひとまずユメリアが無事であること、衰弱しているため一晩預かると告げられた。
カナメはカイナに目線を合わせて、いつもと同じように伝える。
「カイナ 母さん、仕事に行って来るからね ユアのこと任せたよ」
そして、いつものようにカイナを抱きしめ背中をさする。
カイナが不安そうな顔をするときは、いつもこうして勇気をあげる。
「頼りにしてるよ~お兄ちゃん」
だが、この日は。この日だけは、カイナは裾を離そうとしなかった。
何か不吉なことを察したかのように。
「カイナ…」
カナメも同じだった。離れたくない。年端も行かない子なら尚更だ。
カナメは首にかけていた小さな袋を、そっとカイナの手の中に置いた。
「母さんの大切なもの カイナも持ってるでしょ?」
うなずいてカイナも、その首にかかった袋を見せる。
「母さんのお家じゃあね、大事な約束のときはこれを交換するの
必ず帰って来られるように、って」
「…本当に、ほんとに帰ってきてくれる?」
「ああ 約束する だから、ユアと一緒にいてあげて お願い」
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