第20話 食堂へ

 話を終えて、アゲハはミチュラム先生と一緒に渡り廊下を歩いた。渡り廊下は、

ガラス張りで外が見えるような作りになっていた。ただ、初等部と中等部いずれの

校舎よりも明らかに新しく、後付けで設けられたものであることが見て取れた。

 右側を見ると、初等部と中等部を隔てる崖に対して曲がりくねった坂道がかけられていた。まばらではあるが、その道を使って校舎を移動している人もいた。

 

 渡り廊下を渡りきると、子供たちが待っていてくれた。

「花見さん遅い~」「だから戻ろうって言ったんだよ」

「ごめん!先生とちょっとお話してたの」

「あっほんとだ、先生もいる」「先生も、食堂、いく?」

「私は少しやらないといけないことがありますので止めておきます。

皆さん、しっかり花見さんを案内してあげてくださいね」

 そういってミチュラム先生が立ち去ろうと踵を返したところで、思い出したようにアゲハの方に向き直した。

「…と、そういえばクークラル先生から言われていました。

花見さんは今携帯を持っていますか?」

「?はい、持っています」

 ポケットから携帯を取り出した。

「おや、を持っているとはなかなか珍しいですね……じゃなくて、

「クークラル先生から、もし花見さんと離れることがあれば連絡できるようにして

おいてほしいと言われていたんでした。少し待ってください」

 手帳に何かを書き、破いてアゲハに渡した。

「学校の番号です。それでは」

 そういって、足早にミチュラム先生はどこかに行ってしまった。


 早速番号を追加しようとしたが、渡された紙には数字のような文字のようなもの

だけ書かれており、まったく何が書かれてあるのかわからなかった。

「みんなは携帯持ってる?これどうやって使うの」

「なにそれ」「携帯は、持って、ない」「携帯って手でするものじゃないの」

 わからないから、そのままポケットに一緒に入れてしまった。


 食堂は中等部校舎の横に併設されているため、

アゲハたちは外を出て食堂に向かった。食堂はすでにそこそこ生徒がおり、

中等部の生徒も初等部の生徒もぜで食事をとっているようだった。

 食堂はフードコートのような形式で、調理している人の姿は見えたが誰もその前に列を作らず、そのまま席に向かっていた。子供たちも席に座ってしまった。

「あれ、みんな注文しに行かないの?」

「注文は、席で、できる」「メニューがあるでしょ」

 確かに机にはメニューの書いた紙とペンが置かれていたが、

その他には注文用紙のようなものは何も見当たらなかった。

「?どうやってやるの」

 アゲハがわからないでいたので、子供たちが実演して見せてくれた。

「机にペンで直接かくの」「おれにする!」

「えー!じゃあ、私にするわ」「ぼく、

 すると、子供たちは各々机のペンを取り、机にその食べ物の名前を書いていった。たちまち机に書いた文字が消え、子供たちの正面にタイマーのようなのが現れた。

「これが出来上がるまでの時間」「げー!やっぱラーミョン混んでるよ」

「それいつも言ってるわよ、あんた」「きた」

 と言っていた子供の机の前に、食べ物がフッと湧いて出た。

その食べ物はアゲハにとって見覚えのある食べ物であるようだった。

「おにぎりだ」

、だよ」

 アゲハも、そのおにぎにぎを食べることにした。


 ご飯を食べ終えると、その食べ終わった食器もまるで何もなかったように

消えてしまった。お昼時というのもあって、さらに食堂は生徒で混雑してきた。

「みんなはこの後どこ行くの?」

「私はいったん家に帰るわ」「私もかなー」「おれは兄ちゃんにあってくる」

「ぼく、図書館」

 どうやらみんなバラバラになってしまうらしい。

「花見さんはどうするの?」

「うーん、とりあえず外に出ようかな」

 出口に差し掛かったところで、後ろから聞き覚えのある声がした。

「アゲハ様!こちらにいらしたんですね」

「アイリス!あなたもご飯食べに来てたのね」

「いえ、わたくしはあなたを探してここまで来ました。クークラル先生から、

ミチュラム先生に訊いて、ここまで。…ところで、この後お時間あるでしょうか」

「?」

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