第15話 北の街


 一方、ミヨのこと。ミヨは王城を左回りにブラブラと歩いていた。人の往来はそこそこにあるが、王城に近いだけあってかスーツのようなかしこまった服を着用している人が多かった。それに加えて、昨夜ミヨたちを王城に連行した近衛兵たちも王城から出入りしている様子も見られた。

 学校のある方を見ると、校舎は大まかに見て4つの段に分けられているようだ。上から1番目と2番目の校舎の間からは、電車の様な乗り物が出入りしているのが見えた。車の姿こそ見られないが、ミストリアという都市はアゲハとやってきた世界と

文明の差がほとんどないようだった。

「しかし…じゃな」

 空には例の”水のクジラ”はいるものの、カラスやスズメのような鳥はまったく飛んでいなかった。街中にもネコはおろか犬を散歩しているような人も見られなかった。


 ちょうど王城の真後ろまで歩き切った。王城から橋は伸びておらず、王城に入ることができるのはかなり限られていることが見て取れた。城を背に向けると、道幅のある坂道が見られた。

 気まぐれで1段上の道に入ろうと思い、その坂を登り始めた。昨夜に通った道とは打って変わり、曲がりくねった複雑な道ではなく直線で、並んでいる店も露店ではなかった。外から見える店内はきれいに整えられ、照明も備えられていた。心なしか歩いている人達の服装も昨晩の人達とは異なっていった。

 それに、その大半は耳が長かった。

 

 坂の先には駅があり、学校から出ていたのと同じ電車がせわしなくホームを出入りしているのが見えた。少し駅の様子が気になったため、ミヨはそのまま坂を上って駅に立ち寄ってみることに決めた。というのも、昨夜は駅の様なものを見かけた覚えがなかったからだ。いったいどこに繋がっているのか。


 駅の中に入ると改札のようなフェンスがあり、その頭上には路線図が載っていた。図を見ると、ミストリアの中のみを走るものと、ミストリア周辺の都市をつなぐものの2種類あるようだった。前者は、外壁の内側をなぞるようにして一周しているようだった。後者については水の国の外周を囲むようにして線路がめぐっており、ミストリアからは東西の都市に繋がっているようだった。しかし、水の国の国に繋がるような路線は書かれていなかった。

 今いる駅から反対側にある駅を探すと、門の正面に駅があるように描かれていた。門は北門と南門の2つしか描かれていないため、この駅のある北門ではない南門からミヨ達が入ったということはわかった。だが、このことが余計ミヨを混乱させた。

「???なんでじゃ?え?正面に駅なんぞなかったじゃろ!」


 モヤモヤしたまま駅を出て、再び散歩し始めた。人に訊こうとも考えたが、行けばわかると思い、今度は路線に沿って歩くことに決めた。昼時になったころには1つ目の駅を通り過ぎた。少し、人の視線を感じた。

 しばらく行くと、電車はトンネルの中に入ってしまい見えなくなってしまった。

ミヨは「そういうのもあるんじゃな」と納得し、モヤモヤが少し晴れたようだった。   

 そのまま道に沿って歩き続けることにした。城から見て11時の方角まで来るとお店よりも住宅地が多くなり、大半は大きな家だった。しかし、歩き進めるにつれ昨夜の街のような雰囲気になってゆき、

露店も見かけるようになってきた。また、視線を感じた気がした。

 いつの間にか人通りの少ないアーケードにいた。お店はやっているようだったが、活気には乏しかった。そして、ここで初めて動物の姿を見かけた。ネズミだった。

 視線が。そう思ったそのときに、路地裏からフードを被った人がミヨの背中を抱えるようにしてミヨを路地裏名連れ込み、

「あなた何やってるの!!そんな恰好で外出歩いたらダメでしょ!」

叱ってきた。


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