第14話 子供たち

 校内に入って3階ほど登った。外観は古めかしいが、校内はきれいに保たれていた。4階はさらに上の校舎と繋がる連絡路があり、部分的に改築されているところは古い学校ということをさらに強調していた。

「今向かっているのは初等部4年の授業のところですな。花見さんは魔法については知らないと思いますでな、今回は魔法学の授業に参加してもらいたいのですな」

 廊下を歩きながら言う。途中生徒とも何人かすれ違いあいさつした。

「ところで…ミヨさんはどこに行かれたのですかな?」

 クークラルに付いてきていたのはアゲハだけだった。

「なんか、学校入る前に町の方行きたいって言ってそのまま行っちゃいました」

「⁉それは…少し困りましたな。急ぎますな」

クークラルの歩くスピードが少し早くなった。


 ある教室の前でクークラルはノックして扉を開けた。部屋の中には椅子がまばらに配置しあり、10人ほど子供がいた。中にはメガネをかけた男性がいた。

「ミチュラム先生、花見アゲハさんですな。では、後のことをお願いしましたな」

 手短に言い終えて、クークラルは早々に教室を後にした。去り際にニコニコとしながら手を振っていたので、アゲハもつられて手を振った。

「初めまして花見さん、ミチュラムと言います。花見さんについてはクークラル先生から少し聞いています。もうすぐ授業が始まるところなので…少し教室を見てまわると良いでしょう」

 教室の窓には暗幕がかかっており、外の景色が見えない状態だった。床には変な模様があり、かすかに光っているように見えた。教室の子供たちは、椅子に座っている子もいたが教室の後ろで走り回っているような子もいた。

 チャイムが鳴った。子供たちがまばらに席に座った。

「はい皆さん、注目!

今日は一緒に学んでくれる方がいますよ。花見アゲハさんです」

「花見アゲハです!よろしくね」

拍手と一緒によろしくと子供たちが返してくれた。

「花見さん、好きな席についてくださいね」

 子供たちから「こっち来て!」「こっちこっち」といろんな席から言われたが、アゲハはとりあえず一番近いところに座ったようだ。

「今回は1回目のの日ですね。皆さんは去年の一年間、魔法学を学んできましたね。ちゃんと覚えていますか?」

 少し間があってから返事があった。

「…少し怪しいですね笑。花見さんは昨日発現されたようなので、今からみんなで教えてあげてましょう」

「まず魔法の種類について復習しましょう。誰かわかりますか?」

「はいはいはいはい!」

 元気そうな男の子が手を上げる。

「魔法はな、水と火と木と、

あと土ときんと…あと、あと、なんだっけ」

隣の子に訊いて、

「そう!光がある、です‼」

「少し違いますね。きんではなくこんと言いますよ。

しかしよくできました。それをまとめてなんというかも覚えていますか?」

「忘れました!」

 子供たちが吹き出した。アゲハの近くに座っていた女の子が手を挙げて、

「はい、六華りっかです」

「その通り、素晴らしいです。これは6つの国の花についても指していましたね。

もちろん、ミストリアが何の花かわかりますよね」

 今度は全員が一斉にアジサイ!と声を上げた。

「今日は実習なので実践的なことも聞いてみましょうか。

誰か魔法の出し方を説明できますか?」

「はいはいはいはい!」

 再びあの男の子が手を挙げた。

「魔法はこう…て力入れて来い来いって思ってると、て出てきます!」

「うちのは違いますわ。全身でバーッですの!」

「そうですね。一点に集める方法と全身に広げる方法の2つがあります。感覚的なことなので説明しづらいことですが、しっかり言葉で言えるようにしましょうね」


「今日はこの2つの方法で魔法を出すことを目標としましょう。では、はじめ!」

 子供たちは席を立って、各々教室に広がっていった。だが、大半はアゲハのそばに集まった。アゲハにそばに座っていた女の子から訊いてきた。

「ねえねえ、花見さんはどんな魔法使うの?」

「私、自分が魔法使ったこと覚えてないの」

「皆覚えてないよ」「そうそう、ずっと昔のことですもの」

「わたしは5歳の時に発現したらしいわ、お母さんが教えてくれたの」

「オレ4歳~はい勝った」「ちょっと!勝ち負けじゃないでしょ」

「ミチュラム先生。魔法って、そんな早く使えるものなんですか?」

「そうですね。普通は4歳から6歳までに発現しますね」

「皆はどうやって魔法の使い方わかったの?」

「なんか、使えるときは身体がポカポカしてくるの」「私もそうね」「ぼ、僕も」

「みんなそうなの?」

 子供たちがみんなうなづいて共感していた。


 教室の後ろの子供たちは手から水を出したり、鼻を光らせたりして遊んでいた。不思議なことに、零れ落ちた水は地面に落ちる前に消えているのが見えた。

 あの男の子も

「見て見て!指から火、火、火!」

 両手を広げて親指から中指にかけて指から火を出した。

「うちも!うちのも見てほしいですの!」

 振り向くと女の子が宙を浮いていた。

よく見ると、彼女の背中からは葉っぱでできた羽が生えていた。

「すごい!どうやってるの」

「うちの木の魔法ですの!」


「花見さんも魔法使って見せて!」

「えーできるかなぁ」

「手にギューッでバーッだよ!」「がんばれ!」「がんばって!」

 子供たちが応援してくれる。先生もアドバイスしてくれた。

「手を見て深く息を吸ってください」

 両手をよく見て、大きく息を吸った。

「息を止めて!はい、1、2,3、…息が苦しくなるまで」

 両手の先がポカポカと熱くなりだした。

呼吸が苦しくなり限界に思ったその瞬間、氷の塊が両手いっぱいに現れた。

「うわ!おもッ」

思わず床に落としそうになった。子供たちが、

「すごい!」「氷の人、初めて見た」

「ぼ、僕も氷なんだけど…」「あんた全然できないじゃない」

「氷って珍しいんですか、ミチュラム先生」

「そうですね。火と水、木、光、土、金…つまり建国の六華にあたる6つの属性を使える方が大半ですね。しかし、それに分類できない属性もありますね」


「あの…これどうしたらいいですか」

アゲハの肩は限界を迎えていた。先生は、

「忘れていました笑そのまま床に落としても大丈夫ですよ。勝手に消えるので」

流石に大きすぎたため、ゆっくり地面に下した。



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