第13話 昼の空
一度部屋に戻ると、衣服を用意してくれた従者が一足早く部屋で待っていた。
「これから学校へ行かれると聞いて急ぎ、用意させていただきました。学校の制服でございます」
「え!着て行ってもいいんですか⁉ありがとうございます」
嬉々としてアゲハが制服を広げてみる。アゲハが着ていたセーラーとは異なりブレザー様の制服で、少し厚めの生地で繕われていた。
従者の一人が、
「その…今朝の我々の態度、非常に申し訳ございませんでした。事情をその場で知ったうえであったにもかかわらず…」
頭を下げた。ほかの従者もそれに続いて、各々申し訳ございませんでしたと頭を下げた。
「私ももう少し考えて発言するべきでした。ごめんなさい」
アゲハも頭を下げた。
「そうじゃぞーアゲハ おぬしはもっと考えてものを言うべきじゃ」
いつの間にかミヨは制服を着て終えていた。
「…じゃが、わからぬことをすぐ尋ねるのは悪いことじゃないぞ」
アゲハの肩に手を置き、そう言った。
着替えが終わってすぐのころ、扉からノックがした。アゲハが扉に手を掛けようとしたのを見て、アイリスがそれを止めた。
「扉を開けるときは、どなたなのかを戸越に訊かなければならないのです」
「どうして?」
「そういうルールなのです」「ドラキュル様のルールなのです」
従者も口々に言った。アイリスが尋ねる。
「どなたですか?」
「ドラキュルにございます。玄関にて、クークラル様がお待ちでございます」
アイリスが扉を開けるとさっき通った通路とは異なり、ホール状の広間につながっていた。アゲハとミヨは扉を出たが、アイリスたち従者は部屋の中に残った。
「行ってらっしゃいませ。アゲハ様、ミヨ様」
「アイリスは行かないの?」
「わたくしは午後からでございます。後ほど、お会いしましょう」
そういって扉が閉じた。
「よくぞ来てくださいましたな!ささ、学校まで少し歩きましょうな」
クークラルに続いて玄関を抜け、左方に広がる庭に沿って歩き始めた。
「今日は天気が良く、大変よろしいですな!」
「え、雨が入ることってあるんですか?」
「そういえばそうじゃな この町には天井があるはずじゃったし」
二人とも、昨日見た空を思い出しながらに言う。
「上を、見てみてくださいな。今は何が見えますかな」
クークラルが指さす方を見ると、
「クジラが…いる…」
「水のクジラですな。まれに雨を降らせるのですな」
「じゃが今朝も見たのう、似たようなの」「うん、似てる」
「おや、ご存じでしたかな」
「湯船におったわ。ルオフィア様の魔法とやら、じゃったかのう」
王城の城壁まで突き当たったところに小さな扉があった。城壁の上には警備らしき人がおり、クークラルが手を振って挨拶した。クークラルが開けると、王城と街に繋がる細い石橋がかけられていた。
橋を渡りきったところで、クークラルが立ち止まって言った。
「目の前の建物がわたくしめの学校ですな」
「…どこまでが学校なんですか?」
階段状にレンガ造りの赤い建物が視界いっぱいを占めて見えた。
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