第10話 ルオフィア様

 2人が部屋に入ってすぐのころ、王城の一室にて。

「今日は以上ですね。お疲れ様、シェフィル」

立ち上がって側近のシェフィル・ラジエモリにねぎらいの言葉をかける。シェフィルはそれに答えて深々と頭を下げ、

「お休みなさいませ、レディ」

と言い、部屋を出ようとした。シェフィルがノブに手を掛けようとしたとき、部屋の外からノックする音が聞こえた。シェフィルが、戸越とごしに尋ねる。

「如何なる用でございますか?」

 冷たい声が向こうから答えた。

「戸渡し、ドラキュルにございます。ルオフィア様の予言の件で参じました」

シェフィルが扉を開けると、血の気のないスラッとした男が部屋に入ってきた。

 

 小声で、

「…代わりますか、ルオフィア様?」

と言った。瞬間髪の色が青に変わり、シェフィルとドラキュルは胸に手を当て改めて、お辞儀をした。ドラキュルはその姿勢のままルオフィア様に言う。

「ドラキュルにございます。ルオフィア様の予言の通り、本日2人の方がおいでになりました。」

 閉じた目をゆっくりと開き、ルオフィア様が

「やっといらっしゃったのですわね‼どちらにおられるのかしら」

「扉をお繋ぎいたします。どうぞ、扉の前へ…」

 扉の近くに移動してドラキュルが言った。ルオフィア様が扉の前まで移動すると、ドラキュルは扉を開けた。

「正面の部屋にございます」

「あら、ナツメの間ですわ。とてもいい選択」

 ドラキュルが先導して戸のそばで待機した。ナツメの間の扉前で、ルオフィア様が思い出したようにドラキュルの方を向く。

を呼んでくださる?一緒に占いの結果をお話いたしたいわ!」

 それではと言い、ナツメの間の戸をノックした。

「どなたですかな」

 扉の内側から老人の声がした。

「ドラキュルにございます。ルオフィア様の予言の件で参りました」

扉が開き、白いひげを蓄えたクークラル・ミュー・ハットラスが顔を出した。

「これはこれは…ルオフィア様がおられるということは、予言が的中したということですかな?」

「それを確かめに行くところですのよ、爺や!」

クークラルの手を引いてルオフィア様が言う。


 ルオフィア様がナツメの間の戸を開くと、ミヨは部屋の中をうろうろとしていた。ミヨは扉が開いたのに気づいて、

「うお⁉誰じゃおぬしら⁉」

 ルオフィア様は速足でミヨのもとに近づいて手を取り、

「あなたが獣人の子!当たっていますわ、爺や‼」

振り返ってクークラルに言う。

「そのようでございますな!」

 ミヨの方に再び顔を向けて、

「もう1人いらっしゃいますわよね⁉どちらに?」

 ミヨは驚き、絶句したままにアゲハのいるベッドの方を指さした。また足早にベッドの方に歩いてゆき、

「この子は氷の魔法を発現した子!であっていますわよね⁉ドラキュル」

「そのように聞き及んでおります」

「間違いありませんわ!ムンちゃんのやり方通りでピッタリ的中ですわ‼」

「爺の予言は1つ外れておりましたな。爺は男の獣人と占っておりましたな」

髭を撫でながらクークラルが応ずる。

「1つの違いなんて誤差ですわ!ああ、明日は梦ちゃんに連絡しないと」

 ミヨはようやく正気に返り、ルオフィア様とクークラルに近づき子声で、

「何やっとるんじゃ‼アゲハはまだ寝ておるんじゃぞ」

と叱った。ルオフィア様は小声で返す。

「この子はアゲハっていうのですわね。あなたは何と言いますの?」

「わしはミヨじゃ。おぬしらこそ何者なんじゃ?」

 ルオフィア様はベッドから離れてシェフィルに尋ねる。

「どうかしら」

明日あす、お2人を招いたときの方がよろしいかと」

 ミヨの方を向き、

「明日の朝食にお話いたしますわ。そのときは2人でいらしてくださいね」

と言い、続けて

「安心してくださいまし。わたくしはあなたたちを歓迎しておりますわ」

と笑顔で付け加えた。


 一行が部屋を出て行ったあと、いろいろ考えようとしたが、

「もう…知らん‼」

そういって、ミヨは奥のベッドに潜り込んで眠りについた。



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