第8話 初魔法

 広場の周囲からうるさい警告音が流れ出した。

『警告 魔力強度がレベル2に到達 魔力行使を中止せよ 近衛兵が招集されます』

『魔力制限網展開 該当地域の住民は直ちに制限網外へ避難してください』

 広場を囲むようにして網目状の光る壁が地面から現れた。広場にいた人々は制限網の外へ出ていき、様子を見ようと制限網の外には人だかりもできていた。

「猫のあんたもこっち来な!」

ミヨも店主に促されて制限網の外に出た。ミヨが出るのと時同じくして、アゲハの身体から出ている光はさらに強さを増した。集まった野次馬たちがガヤガヤ言う。

「祝福の光だ」「かなりデカくねえか?」「あの年でなるんだなあ」


 光の強さが増すと同時に、アゲハの身体からは肉が千切れるような鈍い音が発せられている。ミヨが心配そうに店主に尋ねる。

「大丈夫なのかアゲハは?とても苦しそうじゃ…」

「…背中に放射状に光が走ってるだろ?あれが魔力の流れる回路だよ」続けて言う。

「魔法はあれが全身に走ったときに使えるようになる。普通はあんなスピードで光が伸びるなんて…ありえない」

「アゲハは…無事で済むんか?」

「…わからない」


「ハァ…ハァ…!痛ッ…い」

 寒さに加えて全身に激痛が走る。頭もひどく痛む。幻聴まで…

「あ、えと…聞こますか?花見アゲハ」

頭の奥から女性の声がした。ノイズが混じっている。

「…ハァ…は⁉だ、誰?」

「えと…端的に言うと、」「あなたをこの世界に連れてきたモノ、」

「いや…犯人、です」

ッ…なんでっ…」

『警告 魔力強度がレベル3に到達 直ちに魔力行使を中止せよ』

『繰り返す直ちに中止せよ』

「あまり時間なさそうだし、またゆっくりと、でオネガイシマス…」

そこで急に声が切れた。


 光の輝きが最大となったと思われる、そのときである。アゲハを中心として、広場の床面が勢いよく凍ってゆき、中央にある噴水の水をも凍らせた。それとともに光は急激に弱まり、完全に消えた。

 制御網はいまだ敷かれており、ミヨは網越しにアゲハに声を投げかけた。

「アゲハ!大丈夫か?」

 アゲハは眠っているようで、静かに呼吸をしているのが見えた。

 身体からはいまだに蒸気が立ち上っていた。


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