O氏再会

 K氏への気持ちが落ち着いたころ、私はまたサイトで新たな相手を探し始めた。

 ところで、私がやっていたサイトには日記という機能があり、ブログのような形で好きに記事を書いて投稿できた。そこで私もここで書いていたのと同じ内容を投稿しており、それを読んでメッセージをくれたのがO氏だった。

 自分の日記についていた足あと(誰が読んだのか分かる機能)を見て、そこに以前と変わらないアイコンを見つけた時、思わず目を疑った。と同時に、ひどく心が躍った。O氏はメッセージで、私の書いた日記の感想を送ってくれた。私だとは気づいていない様子だったので、もしかして以前に会ったことありますよね…?と返信。向こうも思い出してくれたようで、それからすぐに会う約束をした。(ちなみにこの時彼は私の文章をたいそう褒めてくれて、それがきっかけでここに投稿するようになった。)


 会ったのは5~6年ぶりだったけど、不思議とそんな気はしなかった。以前と同じように、一緒にご飯を食べ、何でもない話をして、好きな音楽を聴いた。急にブロックされて寂しかった、という言葉にちょっとときめいたし、別れ際もうちょっと一緒にいたいと思って帰り道は遠回りしてもらったりもした。

 だが分からなかったのは、O氏に対しての気持ちが、過去の自分の気持ちを引きずっているだけなのか、こうして再会してから改めて好きになったのか、ということ。好意があるにはあるんだけど、以前のような自分が自分でなくなるようなダイナミズムは私の胸の内にはもうない。

 なんとなく宙ぶらりんな気持ちを抱えたまま数回会ったのち、相手がコロナに罹ってしまったり年始に地震が起きたりした関係で会う機会はなくなってしまった。そして、そのままO氏と会うことはなくお別れすることになる。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る