Level 1.92 瞬べ!クラウス その2
**前書き**
新年あけましておめでとうございます。<(_ _)>
って、もう三日やないかーい!?(絶叫)
…本来であれば、この拙作の主人公たるクラウスを年明けまでに帰郷させてやりたかった次第です。
が、仕事納めからの連日のドカ食い・ドカ飲み・ドカ寝正月で気付けば今日を迎えている次第めにございます…(照)
さて、ここでお知らせです。
ぶっちゃけるとまた新作を書きます。いや、もう書いてるんですよ。はい。
ただ、去年暮れに思いついた幾つかのプロット。どれも書きたいんですが如何せん時間も根気も無いわけでしてw
正直、未だにどれから手を付けようかと迷っております…まあ、この弱筆者に通年の病のようなものでして。周期的に別の作品に逃げたくなるのです。
ですが、現在更新中の本作もそれなりに考えており、構想では既にクラウスの子供が成長して物語の佳境近くまでは練ってるんです。勿体ないんです。
なので、もともと怪しい更新期間が更に怪しくなるかもです。いや、なります。なってしまいますが。この令和六年におきましても、この身勝手極まる森山沼島(相変わらずこのペンネーム意味わからんなあ笑※当人談)をどうぞ見捨てずによろしくお願い申し上げます。
あ。前年は沢山の応援コメント、真にありがとうございます。序に辛口のコメント(まあ、正しいことしか言われてないんですけど…w)はどうか手加減のほどお願いします。ただでさえクソザコナメクジ・マインドの筆者のモチベが削がれてしまいます。まあ、今のところそんな方はいらっしゃいませんが何卒よろしくお願い申し上げます。<(_ _)>
って前書き、長げえよw(言われる前に言っていくスタイル^_^;)
******
俺は現在、十一階層を独り彷徨っていた。
と言っても、昨日で既にダンジョンボスが居る二十二階層の手前、二十一階層まで探索し終わってしまったんでなあ。もはや虱潰しに隠し部屋を探すしかない。
だが、俺には盗賊技能とやらが皆無!
…こんな時にシークレットドアを見つけられる便利な魔法が欲しい。
実はある。まあ、鍵開けの効果がある銀の鍵と近い使い捨てのマジックアイテムだがな。
しかも、ピエット嬢に見せて貰ったが――俺の目の玉が飛び出そうになるほど高価なブツだったとは言っておこう。
アレかな? 迷宮探索者って資産家クラスじゃないと大成できないんじゃね?って思ったもん。
ああ、後そういやぁ――
『ちょっと待ってくれ、クラウス』
『何です、アゲートさん? …今更、やっぱり肉の代金を払う。なんて無粋なこと言わないで下さいよ』
『いや違う。ちょっと君のギルド証を見せてくれないか?』
『はあ』
俺はドンチャン騒ぎして一泊したセーフエリアを出立する際に呼び止められていた。
『……う~ん』
なにやらアゲートさんと同じくギルドの職員冒険者達が俺のギルド証を覗き込んで頭を抱えて唸っている。
『余りに常識離れしているが、コレも決まりだ。どうやらギルドから君への二等級という位置付けは…
『ああ。一月足らずで二十階層。しかも、ソロで……前代未聞だろうなあ。何だよ、ダンジョン特化の加護持ちなのか?』
『おいおい詮索はダメだろう』
結局、何が言いたいのか。
俺が理解できないままにギルド証が返却される。
『コホン。クラウス、君は今から
え? アゲートさん、いきなり何言っての…。
『正式にはギルドに帰還してからの更新になるだろうがね。…
NANDE?と俺が困惑していると、アゲートさんがギルド証の裏を見ろと言う。
俺は手に持ったカード状のギルド証をクルリとひっくり返す。
その三分の一ほどに区切られたスペースに、黒緑の文字で“21”という数字と★マークが一つ表記されている。
なんぞコレ?
『それが迷宮探索者の
そんな事言われてもさあ。
だって、リー達から何も聞かされてないんだもん。
なんならこのギルド証だって、件の適性検査の日にそのサブマスから放り投げられてきただけだしな。
説明もクソもなかったぞ?
が、アゲートさんの説明をこの際キチンと受けておく。
と言ってもそんな難しいことじゃない。
つまり、この数字が自分が到達できたダンジョンの階層を示しているわけだ。
そんで★マークはその到達時のパーティ人数。
俺はソロだから★マークが一つってこった。
全然気付かなかったが、例えば、リー達と一緒に初めてこのダンジョンに潜った時は、きっと“11★★★★★”と表記されていたんだろうな。
『高難度の上級ダンジョンだった場合は色が赤で表記されるんだ。因みに、表記される
ほほぉ~、なるほどね。
で? なんで俺が銀等級なんでしょうか?
『ふむ。事前に説明を受けていない君が混乱するのも無理ない。説明しよう』
お願いします。
流石はアゲートさん。
この一等級迷宮探索者はどこぞの不良中年傭兵パーティとは違う。
先ず、金等級(通常はほぼ最高峰)までの昇級条件だが――
(※三等級をあくまでスタートとする。)
銅等級:五階層以降への到達。
中等級:十階層以降、不定形(変動)階層への到達。
二等級:中等級相当エリアにて十件以上の依頼達成。
銀等級:二十階層以降への到達。
上等級:銀等級相当エリアにて二十件以上の依頼達成。
一等級:三十階層以降への到達。三つ以上のダンジョン踏破。
金等級:上級ダンジョン踏破。
それ以上の超等級と王等級については定められた昇級条件は無い。
まあ、いわゆる伝説に残るくらいの活躍をしなきゃ無理ってとこかね。
……だが、“
『君はソロだろう? そりゃあソロの迷宮探索者は多いよ。どうしても稼ぎは頭割りになるのが冒険者の基本だからね。ただ、ソロはそれだけリスキーなんだ。そのソロで深層へと潜って帰ってこれるほど実力があるってことは、それだけで評価の加点になるんだよ』
そりゃそうだ。
例えば、俺がこのラ・ネストで深層で無効化できない状態異常を喰らったり、ヘマこいて致命傷を受けて身動きできなくなったら――それまでだからなあ。
まあ、そんな事があった訳だが…徹底的にモンスターとの戦闘を避け、緩々と下層から隠し部屋を探している内に十一階層に着いちまったわけです。
トホホ…。
やっぱ単なるビギナーズラックだったなあ。
「仕方ない。一旦引き上げるか」
この度覚えることが叶った無属性魔法<
未鑑定状態のパピルスからラーニングできたんだが、正確な正体は……確か帰還のパピルスとかって言ってたか? 知らね。
この魔法の効果は、建物やダンジョンから即座に脱出できるというかなり便利な代物だ。
今後のダンジョンでの稼ぎが捗るだろう。
俺がその魔法を試しに使ってみようとした時だった。
そう遠くない場所から「ぎゃあ~」という間抜けな叫び声が上がる。
「…なんだぁ? だが、聞いた声だな。……仕方ねえ、様子見に行ってみるか」
*
「痛てえええええ~! 痛てぇよぉ~!」
「ペード、大丈夫か!?」
「だ、大丈夫じゃあねぇ~…」
「意外と平気そう?」
「い、いや…お、大怪我…」
「鬼かよ、姉貴。…相打ちになった時の体当たりで、腕と胸の骨が折れちまってる。
ヤジャ。早く引き返そう。…俺達もこのままじゃ危ねーぞ」
ペードエが大怪我を負ってしまった。
あんな無茶をしておいて、致命傷でなかっただけ幸いか…。
しかし、十一階層のモンスターがここまで手強いとは思わなかった。
確かにグワンの言った通り、僕達“雷撃のジャッカル”は既に満身創痍。
呻き声の一つも上げないが、楯役のローバーキンもかなり酷い状態だ。
僕もだが、トクインもグワンも初めての十一階層で疲労がピークに達している。
だけど、ペードエを抱えながら何とか十階層のセーフエリアのギルド職員の人に助けを求めようにも、それすら現状難しい。そこまでのモンスターとの戦闘を僕達は回避できないだろう。
嫌だ…こんなところで終われない…!
僕の魔力もほぼさっきの乱闘で消耗してしまったけど、こうなったら――
「おう!どうしたい?」
「え!? クラウス!…さん」
「なんだよクラウスで良いってば。こう見えて俺、まだ十五なんだぜ?」
…………。
いや、嘘ですよね?
どこぞのベテラン傭兵団の切り込み隊長か、皆殺しの黒騎士とかでしょう。
僕達は一瞬呆けて、互いに顔を見合わせてしまった。
「こりゃ派手にやられたなあ~。けど、良かったな。
ペードエに伸ばした手から魔力が放たれ、そのままジタバタと暴れるペードエに触れた。
だが、その魔力色は…ライトイエロー!? 麻痺属性じゃないかっ!
「な、何をするんだ!?」
「うん? ホレ。どうだ?」
僕が悲鳴染みた声を上げてペードエと彼を引き離そうとしたタイミングで信じられないことが起こった。
「痛てぇ~……アレ? 痛くねえぞ? な、治った!?」
なんとペードエが立ち上がるとその場でピョンピョンと飛び跳ねる。
僕達四人は呆然とそれを見やる。
「いや、残念ながら治ってないぞ? …ほら」
「え?」
苦笑いする彼の言葉に応じるように振り上げたペードエの腕がクッタリと折れ曲がる。
「「ぎゃあああああああ!?」」
ペードエに釣られてトクインも悲鳴を上げてフラついている。
「レベル3の麻痺魔法<
「「…………」」
僕達はもはや黙るしかなかったが、慌てて彼に礼を言って頭を下げる。
「いいって。これも何かの縁だ。そういや、もう引き揚げるんだろ?」
「は、はい。そのつもりだけど…」
「そっか。じゃあ、
「…へ?」
彼がそうニッコリと微笑んだ瞬間にペードエの姿が
「「ペード!?」」
「あ~慌てなくて良い。地上に移動しただけだから」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!? 送ったってアンタ…」
「よし、次はお前な」
「おっ――」
「「グワン!?」」
今度は堪らず彼に詰め寄ったグワンの姿が消える。
彼は動きを止めることなく今度は完全に怯え切ってローバーキンに抱きつくトクインを二人ごと消し去った。
僕は悪夢を見ているのか?
それとも、実は僕達は既に死んでしまっていて、彼が村の神父さんが言っていた死の使いなのかと本気で思えてしまう。
「ふむ。問題なく他人にも使えるな。同時に脱出する際は身体に触れていなけらばならない、と…」
「あ、ああ……」
そして、僕だけが残ってしまった。
「恐がることはない。あ。ただし、出た先で人とぶつからない様にだけ気を付けてくれよ? じゃ、またな」
「ちょっと待って下さい!?」
僕は反射的に腕を前に出して引き留めてしまった。
「どうした? もしかしてまだダンジョンに用事か?」
「いいや。先ず礼を言いたい…んだ。あのままではペードは身動きがとれず、僕達も危なかった」
僕が頭を下げると彼は満足そうに頷く。
アレ? 意外ともう目付きが恐く感じないような……慣れてしまったのだろうか。
それとも、僕が余りの恐怖でおかしくなってしまったのか…王都に戻ったら教会に行こうかな。
「それと、君にとっては余計な心配かもしれないが。……宝箱の罠には気を付けた方が良い」
どんな方法を使ってるのかは知らないけど、彼は宝箱の罠に殆ど動じない。
恐らく彼は僕が足元にも及ばないほどの魔法使いだろう。
あんな簡単にレベル3の魔法を使って見せるくらいには…。
だが、せめてもの礼に彼に情報を教えてあげたかった。
「一緒に地上に帰還した先輩冒険者に聞いたんだけど、罠の中には直接的な物理・魔法ダメージだけじゃなくて…厄介なモノもこのラ・ネストにあるらしいんだ。特にテレポーターっていう罠に注意するべきだって」
「っ! …テレポーター」
彼が笑みを消して反応を見せる。
やはり、彼だってダンジョンへの脅威には敏感なはずだろう。
当然の反応だよ。
テレポーターは有名なトラップだ。
発動すると被効果者を同階層か別の階層に瞬間移動させる。
…けど、一番にこのトラップの悪名を高めたのが“
とある魔法使いが遺した最期のメッセージという逸話だろう。
そう、最悪の結果――脱出不可能なダンジョンの壁の中に閉じ込められてしまう。
高等級の迷宮探索者達ですら震える不変のトラップらしい。
…のはずだけど。
どうしてだろう?
彼の表情は一瞬にしてドス黒くなって、そこに横一線の赤い亀裂が入る。
ああ、そうか。
これが彼の満面の笑顔なのかあ…。
「(ブツブツ)……なるほど、なるほどぉ。最初からパピルスなんぞに頼らずとも良かったわけか。良い事を聞けた。ありがとう…!」
耳まで裂けたかのように錯覚する笑みと凄味を浮かべながら、クラウスが僕に触れる。
アレ? 僕は彼に注意勧告をしただけなんだけどなあ。
目に映る景色が瞬転する刹那、腹の底に響くような笑い声が聞こえた気がする。
…うん、うん。
今回の件で僕は少し疲れてしまったみたいだ…。
皆と相談して教会に行ってみることにするよ。
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