Level 1.12 王都への旅路 その2

**前書き**


 今後、戦闘シーンではかなり暴力やグロ多めになるかもです。

 特に対人戦で(笑)

 拙作の文章力じゃあ大したことにはならずとも、苦手な方はご注意下さい(^_^;)


******



 はあ~。女が襲われたからって有無を言わさずに飛び出して勝手に主人公ムーブしちゃってるけど…俺も大概、迂闊だよなあ。

 そもそも、見ず知らずの土地で街道から飛び出すこと自体、かなりの蛮勇だ。俺はコンパスどころか親父から譲られた大陸地図も持ってきてない(失くしたり盗まれたくないから)。てか、この世界…コンパスとかあるんかな? でも海に船とか結構な数が出てるみたいだし…それに近いマジックアイテムなり魔法があるかもだな。


 だが、伊達に俺もガキの頃から親父やプウ老人に鍛えられてねーんだわ。

 現状、雑木林に入って十五分くらい早足より少し早いスペースで進んでる。光の加減からして街道付近からだいたい五百ハーフリング(メートル)くらい平行して探索してる感じだ。

 前方から逃げてきた連中の具合から見て、流血沙汰は必死。なら、血の跡なり乱雑に移動してへし折った木の枝なり、余程の間抜けなら足跡も残ってるはず…。


 そうしてモンスターへの遭遇する可能性も鑑みて、警戒態勢を崩さずに探索を続けると血の匂いがした。獣臭くないから――人間の血だろう。


 俺はそそそっと立ち止まりつつ体勢を低くして周囲を伺う。

 ……ビンゴだ。引き摺るような血の跡だ。だが、量が半端じゃない。相当な手負いだな。

 跡を辿ると、藪の中にモゾリと何かが動く。夥しい血を流す男が倒れていた。


「おい、生きてるか」


「あ…ぐぅ…?」


 生きてたな。が――もう長くない。

 左目を刺突武器か何かで突かれて恐らく脳にまで達している。とっくに死んでておかしくない致命傷だ。足に刺されて折られた槍の穂先……コレでやられたのか。

 彼が逃げてきた奴が言ってた護衛だろう。

 …若い。歳は俺と同じくらいだろうか。


「…うっ…たの、む…」 


 血濡れの青年がブルブルと震える手で握りしめたナイフで雑木林の先を指す。

 ……自分の助けを求めるよりも、その娘達を、か。

 こんな身体で雑木林の中這ってくるとか、ガッツ有り過ぎだろうがよ…。


「安心しろ。俺が野盗共を倒して、娘達を助けてやる」


 青年は俺の言葉を何とか聞き取れたのか、微かにコクリと頷いたように見える。


「俺はサンドロックのクラウス。アンタ…名は言える………っ」


 青年は既に事切れていた。いや、既に殺されていたのだろう。執念が彼をここまで動かしたんだろうな。

 俺は青年の力の抜けてしまった手からナイフを取る。刃渡り三十センチはある結構大きいナイフだ。悪いが、戦闘は避けられんだろう。有難く使わせて貰うぞ。

 それから足に深々と刺さっていた折れた槍も抜いてやる。

 一応、サンドロックで領民以外の死体を発見した時と同じよう身元を調べる為、俺は手を合わせた後に彼の懐や背嚢を探らせて貰う。

 …………。

 背嚢にギルド証らしきものが入っていた。昔、リバーサイドでケッホ師達から見せて貰ったものと似てるからたぶん間違いないだろう。

 

 ルバス(17) ハーン所属/三等級傭兵

 出身地:オークブラッド王国直轄地グレイム・アル


 ……王都の冒険者だったか。だがこれで身元は確認できたな。


「先輩、仇はとってやる。…必ずな」


 俺は彼を抱えて街道付近まで運んだ後、再び捜索を開始した。


   *


 女の悲鳴が聞こえ、俺は脚を早める。

 が、同時に本格的に隠密行動を開始する。賊は見つけ次第、不意打ちを仕掛けて容赦なく仕留める。それがサンドロック流だ。他所は知らんぞ。


 ……見つけた。百ハーフリング先の少し開けた場所に居る。

 敵が離れて索敵してる気配は――無いな。随分と余裕なことだが、それだけ自信があるのか? なら、敵は五人として想定して大丈夫か。

 俺に背を向けて完全に死角になってる奴が手前に一人。

 中央では攫った娘に御機嫌で馬乗りになってる奴が一人。さっさと殺したいがまだ我慢。

 それを囲う形で向こう側に三人居る。その中にそうです私が魔法使いですと言っているような古風なローブ姿の奴の姿がある。

 魔法使い…まあ、いるかと思ってたよ。殺されちまったルバス青年には槍創の他に数本の矢が刺さっていたが、極めつけは胸に抉られたように開いた穴だ。プレートの胸当ての上から、な。十中八九、魔法によるものだとピンときた。周囲の血がえらく滲んでたから…その魔法で濡れたんだろう。恐らく水属性の攻撃魔法だろうな。

 多分、俺も使えるヤツだから想像はつく。


 俺はジッと観察を続けながら息を殺す。熱くなって安易に飛び出すなと親父に何度も言われたっけ…でも実際、難しいよなあ。目の前で女が乱暴されてたら。知り合いでも何でもない俺でも腸が煮えくり返る。


 俺は足元の枝を自然と拾い上げ、見もせずにその先端をナイフで削いで尖らせる。そして、それをスカイブルーの魔力で包み込んで上に向けた手の平と平行に浮遊させる。

 レベル1の風魔法<投擲矢ダーツ>。風属性の魔力でコーティングした小さな投擲物(※細長いものが好ましい)を遠くまで高速で飛ばすだけの魔法。

 因みにコレ、割と最近に森の狩りでプウ老人から教えて貰った魔法だったりする。

 俺はコレをスナイパーライフルのようにして使う。ただ、タメが必要だから狙撃以外…例えば戦闘中とかには先ず使い道がなかったりな。

 狙うは魔法使い一択。どんな魔法を使うか興味はあるんだが…流石に女達が人質にされたら堪らんからな。俺の道楽に巻き込むわけにはいかんだろう。


「おうおう!いい加減俺も辛抱たまんねえなあっ!」


「いやあっ!?」


 野盗連中に手を縛り上げられた女達は四人。中央で既に残念なことになっている彼女を除いて、もう三人は隅で震えていたが、野盗の一人が腰のサーベルを抜きながら三人の内の一人…獣人の少女の髪を乱暴に引っ張りやがった。


「お前なあ…? 流石に三人は奴隷商に引き渡さねえと大した稼ぎにならねえだろ」


「はあ? いいじゃあねえかよ、獣人の女くれえ。アイツばっか楽しんで狡いぜ」


 魔法使いらしき男の忠告を無視して、どこから見ても悪人面の男が興奮した様子で少女の服をビリビリと破き、悲鳴が再度響く。そして暴れる彼女にサーベルを突き立てた。


「コイツ!大人しくしやがれ! ちょいと躾けてやるぜっ」


「おい! 殺すんじゃあねえぞ!」


 あ。ダメだ。もう限界――


 ビッ! ドシュ。


「………へはっ?」


 悪人面は自分に何が起こったのか解らないようで呆けていたが、数秒して崩れ落ちた。ソイツが立っていた後ろの木の幹に俺の魔法で放った枝の矢が深々と血飛沫と共に突き刺さっていた。遅れて女達の悲鳴が上がる。

 悪人面の左目・・には魔力の高速回転でドリルのように抉り飛ばされてできた穴がポッカリと開いていた。

 俺は心の片隅でソイツが槍を使っていた奴だといいな。と、自分の血が急激に冷えていくのを感じながら……祈った。


「だ、誰でテメエはっ!?」


 ……もう我慢できん――キレちまったぜっ!!



 

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