第7話
◇◆風華視点◇◆
「なあコータロー、何で俺は話に混ぜてくんねえんだよ」
「申し訳ないけど大事な話をだな……」
「まあ俺って公園大好きだからいっか! おっしゃーガキども遊ぶぞー!」
私たちは学校近くの公園に来た。
私と道永くんはブランコに並んで座り、宗山くんは公園にいた小学生と遊び始めた。
どうやら鬼ごっこの鬼役になったみたい。
そして私はというと――
「私の夢について、だっけ……?」
「はい」
私は道永くんに頼まれた。
私の夢について、聞かせてくれないかと。
恐らく今日の昼休みに言ったことだと思う。
でもそれは……その……。
「なんかスゴい自然に聞いてきてるけど、自分の夢について話すのって結構恥ずかしいことなんだよ?」
「……夢が俺である事を語るのはそんなに恥ずかしい事なんですか?」
「そうじゃなくて!」
道永くんはこういう事を真顔で言ってくる。
ふざけるような人ではないことは分かっているから、きっと本気で言っているのだろう。
「もう、私が言ったことは冗談でも何でもないからね」
「なら、聞かせてください」
その一言は、道永くんの雰囲気が変わっていた。
冗談だなんて一切感じない、彼の気持ちが。
「……道永くんたちはさ、長谷高校受験したでしょ?」
そう言うと、彼はこちらを向いた。
その目をしっかり見て、私は言った。
「実は私も長谷高校を受験したんだ」
「……え?」
「そりゃ驚くよね。私もさっき聞いてびっくりしたもん」
「驚くというか……なんで、長谷高に?」
ここまで言っても、道永くんは気づいていない。
「NoneTypeが神奈川で活動してるって知って、絶対長谷高校に入学すると思った」
「俺らと同じ高校に入るために、長谷高に受験したってことですか?」
「うん、でもあんまり頭良くなくてさ。というか、こんなのストーカーチックで気味悪いよね」
「……いや、そんな事はないですけど」
そう言うと道永くんは少し悲しそうな表情を見せた。
……悲しくなるようなこと言ったかな。
もしかして私が受験失敗したことに同情して――
あ。
「別に道永くんも頭良くないって言ってるわけじゃないからね!?」
「いや、そこじゃないから、落ち着いて」
冷静に諭された。
「……でも、今は受験落ちてよかったなって思ってるよ」
「良くはないじゃないんですか」
「結果的に道永くんと同じ高校に通えてるんだよ? こんな奇跡的なこと嬉しいに決まってるじゃん!」
「その割には二年のこの時期まで接点無かったですよね」
ギクッ……。
そう。
言われてみればそうだ。
私は憧れの存在である道永くんが奇跡的に同じ高校に通っていることが判明しても、すぐに声をかける事が出来なかった。
二の足を踏み続けて、結局今頃となった。
今もそんな彼を横にして、まだ踏み出せずにいる。
「でも嬉しいです、百瀬さんがそう言ってくれて」
「……え?」
道永くんはブランコから降り、そう言った。
「俺が何のために音楽をやっていたのか、それを今思い出せた気がします」
「……!」
陽が沈みゆく空を真っ直ぐと見上げる彼を見て、確信した。
道永くんも、私も同じ。
誰かに背中を押して欲しいんだ。
……ここしかない。
今の道永くんの顔、すっごく良い顔してる。
「道永くん!」
「……はい」
私も立って、道永くんと向き合う。
一度断られた誘いを。
今ここで。
道永くんの背中を、私が押すために。
「私と、バンド組んでくれませんか!」
「――はい、やらせてください」
◇◆◇◆◇◆
帰り道、道永くんは教えてくれた。
『人を突き動かす音楽を、俺は作りたいです』
それが道永くんが言っていた、思い出したことなのだと思う。
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