第22話 アオハル

6月になった。

相変わらず香と佐藤は進展せずに一緒に下校していた。


どうやら佐藤は本当に恋をしているようだ。

部室の窓から帰る二人の後ろ姿を見る。

「もう手を繋ぐのも慣れたものだな」

「リア充は悔しいでごんす…」

「まぁ本気みたいだしいいんじゃねえか?」あおいも眼鏡をかけて見ている。


堤はエロ本を片手に「けしからん…」と一言だけ言った。

最近はペペロンチーノ♡様のエロ本もお気に入りらしい。


「あおいちゃん、俺って何に似てる…?」

あおいはゆっくり大塚を見た。

「またそれかよ。お前は眉毛の太いポケモンのイシツブ…いやなんでもねえ」

ひどい。せめてミュウツーとかであって欲しい。


「おいどんは窪塚洋介でごわすか?」

「おめーアホかよ。お前はまいう~の人だよ」


つうこんのいちげき。


-その頃-

 

手が繋げるとわかってから佐藤は女子になることが多くなった。

少しだけだが話もできる。

「今日はまっすぐ帰るん?」

「いつも奢ってもらって悪いですし…」

「きゅるるん☆気にしないで」

「もしよかったら、うちに来ませんか?昨日お菓子作ったんです」

「行く!!いいの!?」身を乗り出した佐藤に香は微笑んだ。


香の家はいわゆる豪邸だった。

お手伝いさんがいる家なんて現代にあるの?


「パパ、ママ。お友達連れてきたの」

「珍しいじゃないか。香はこの子のおかげで可愛くなったんだね」

「あらまぁ可愛い子だこと」


実は男ですなんて言えない。

張り付いた笑顔で答えた。


「お部屋行きますか?」と導かれ行った先は20畳ほどの広さの部屋だった。

お手伝いさんがお茶とお菓子を持ってくる。

「これ、ちょっと焦げちゃって…」照れくさそうに笑う香を佐藤は抱きしめたくなった。見た目は百合のアオハルだ。

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